9月3日 平成とは 天安門事件「3」

朝日新聞2018年8月28日夕刊10面:幻に終わった卒業文集 大規模なデモがあった1989年5月4日。私には元々、別の予定があった。「午後2時半、北京大学で同窓会」。学友との再会は、デモの取材でかなわなかった。私は78年10月から3年近く、北京大学歴史学部で中国近代史を学んだ。78年秋の入学生は、文化大革命による教育の混乱が終わり、全国統一入試が復活してから2期目で、全国の秀才がそろっていた。ちなみに、李克強・現首相(63)は78年春の入学だ。天安門事件については次回以降に報告するが、北京大学は民主化運動の拠点だっただけに、事件後は厳しい「政治検査」を受けた。事件から1年余り後に大学を訪れると、同窓生の教師は週3回の政治学習を受けており、「落ち着いて論文が書けない」と愚痴をこぼした。運動に同情的だった彼は、行動記録と反省文を5回も書き直していた。
私は90年に帰国してから、82年卒業の同窓生の足跡をたどりたいと思い立った。「卒業から10年の自分史を書きませんか。意味のある卒業文集になると思います」。そんな手紙を34人に出した。だが、天安門事件の傷痕は深く、断りの返事が続いた。「中国の状況は知っての通りです。この10年、とりわけ89年以来の自分の本当の思想、感情を書いたら、きっと面倒なことになります。仮に真実に反して書いたら、貴兄に申し訳がありません」
数人からは、仕事や家庭の悩みを素直に訴える返信が来た。農村出身で入学時に29歳で2児の父親だったL君は大学教師になっていた。農民から都市住民への戸籍の変更に手間がかかり、一家4人が一緒に暮らせるまでに7年半かかった。「その時、我が家で『家族音楽会』を開いた。その録音テープは家族再会の永遠の記念にしている」と記している。結局、卒業文集は幻に終わった。今年は入学から40年になる。(元北京支局員・田村宏嗣)

朝日新聞ASAの伸光堂西部販売 森林文化協会

ご予約・お問い合わせはお気軽に

Tel0120-740-276

〒352-0011 埼玉県新座市野火止8-14-29

ページトップへ戻る