9月29日 負動産時代

朝日新聞2017年9月22日35面:だまされ買った土地 再び被害 原野商法今度は「転売話」 「新幹線が通る」などとだまし、山林などを不当な高値で買わせる原野商法が社会問題化したのは1970年代。買わされた土地を所有する当時の被害者らが今、「山林を高値で買い取る」などと話を持ちかけられ、またお金をだまし取られる「二次被害」が広がっている。国民生活センターなどには昨年度1千件を超える相談があり、「お金を払う前に家族や専門家に相談を」と注意を呼びかけている。
処分焦る心理狙う 「土地を活用する予定はありますか。なければ、私たちに売らせて下さい」東京都足立区の会社員男性(53)の母親(83)は昨年10月、横浜市の不動産仲介業者を名乗る男から電話を受けた。男性によると父親は1970年代はじめ、「首都移転の計画があり、地価が高騰する」と、うその説明にだまされ、栃木県那須町の原野(約170平方メートル)を350万円で買っていた。
父親の死後、土地の名義人になった母親は「ただ同然の土地が少しでもお金になるなら」と思い、業者に売買を依頼した。数日後に訪ねてきた男は、母親に何枚もの書類に署名、押印させた後、「この土地を売るには、我々がいったん預かる必要がある。代わりにうちの土地を預けるが、差額を払ってもらわないといけない」と、50万円を要求してきた。母親は手元にあった20万円を渡した。
母親は気づかないうちに、別の原野を購入させられていた。母親はほかの業者からも同じ手口で被害にあっていた。男性と母親は警察や消費者センターなどに相談。現在、同様の被害者とともに業者に損害倍賞を求めて係争中だ。「測量」を名目にした別の手口もある。 東京都大田区の会社員女性(54)は2年ほど前、認知症の母親(86)の介護をしながら財産の整理をしていたところ、亡くなった父親が栃木県日光市内に山林(約500平方メートル)を持っていたと知った。70年代に265万円で購入した土地で、父の死後、母親の名義になった。土地には管理費(年3万円)や固定資産税(同約4万円)がかかる。
母親の元には、不動産会社や測量会社から封書やはがきが何通も来ていた。女性は「870万円で土地を買い取る」とチラシでうたっていた業者に電話した。都内の業者を訪ね、山林を売る契約を交わすと、「売買にはこちらの指定業者で測量する必要がある」と指示され、測量会社に43万円を払った。業者はさらに「整地のため300万円が必要」と言ってきた。不審に思って断ると、「土地を買うための融資が銀行からおりない」と一方的に契約を破棄された。結局43万円をだまし取られた。
弁護士に相談したが「訴訟には被害額と同じくらいお金がかかる」と言われ、あきらめた。「母が元気なうちに処分したいと焦った。そこにつけ込まれてしまった」と女性は悔やむ。
北海道帯広市の横山睦夫さん(64)も、狙われた一人だ。70年代半ば、宅地分譲をうたう広告にだまされ、隣の音更町の原野(約670平方メートル)を不動産業者から120万円で買った。業者からのローンを資金に充てた。「当時は土地の値段が下がる日が来るなんて思いもしなかった」と振り返る。以前、「土地を買い取る」という電話もかかってきたが、怪しいと思い相手にしなかった。ローンの完済後も業者の抵当権が抹消されず、その業者は行方不明に。子どもに残したくないと焦る気持ちはあるが、「当面はどうすることもできない」と話す。
相談年1000件 高齢者多く 国民生活センターのまとめによると、原野商法の二次被害に関する相談件数は増加傾向で、2016年度は1076件あった。被害者の7割は70歳以上。センターは「子や孫の世代に『負の遺産』を残したくないという思いから引っかかってしまう」と分析。「業者はしつくこ接触してくるが、セールストークをうのみにせず、まず家族や専門家に相談を」と呼びかけている。
業者側は、原野商法の被害者の名簿を共有したり、土地の登記簿から当時の被害者を割り出したりして、「狙い」を定めているとみられる。業者が摘発された例もあるが、表面化している被害は「氷山の一角」とみられる。
消費者問題に詳しい大迫恵美子弁護士は「2.3年ごとに会社名を変え、詐欺行為を繰り返す業者もいる。いったん被害者になれば、再び別の会社から狙われることも多い。『高値で売れる』などうまい話はまずない。おかしいと感じたら、すぐに専門家に相談してほしい」と話している。 (吉田美智子)


原野商法 「リゾート開発計画がある」「新幹線が通る」などとだまし、山林などを当時の時価の数十倍から数百倍の価格で売りつける商法。1960年代からチラシなどで勧誘が行われ、70年代に社会問題化。各地で悪質な不動産会社が摘発されるなどした。被害の規模は分かっていない。

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