9月28日てんでんこ 音楽の力【24】

朝日新聞2017年9月22日3面:「あす」が津波で一瞬にして失われる現実。宮沢和史は動き始めた。 7月下旬、沖縄県読谷村の座喜味城跡公園に全国からボランティアが集まった。三線の原材料となる黒木を育てる「くるちの杜100年プロジェクトin読谷」。活動を主導する「THE BOOM」(解散)のボーカリスト宮沢和史(51)も炎天下、汗だくになって下草刈りに精を出した。
沖縄では黒木が減り、9割以上が輸入材だ。沖縄の歴史に寄り添ってきた三線を守るため、もう一度、島を「くるちの杜」でいっぱいにしたい。そう願う宮沢は、地元の古典音楽保存会の植樹活動を引き継いだ。
今は約2500平方メートルに3千本ほどが育つ。予定地には植え尽くし、2年前から「育樹」に切り替えて手入れを続けている。このプロジェクトが動き出すきっかけとなったのが、東日本大震災だった。ずっと心に秘めてはいたが、本業の歌が忙しくて腰が上がらずにいた。そんなとき、震災が起きた。人々の「あす」が津波で一瞬にして失われてしまう現実に、衝撃を受けた。
「希望にあふれた言葉と認識していた『いつか』が、非常にあいまいで、はかないものに思えた。いつか、ではだめだ」 もう一つ、震災に背中を押されて始めた活動がある。沖縄民謡を収録・保存する「唄方プロジェクト」だ。 震災翌年から4年かけ、沖縄民謡の第一人者、故登川誠仁さんら唄者約250人を訪ね歩いて音源を収録した。269曲から245曲を厳選して17枚組みのCDボックスをつくった。唄者たちの息づかいが伝わってくる「音の教科書」として、中学や高校、大学、図書館、海外の県人会などに寄贈した。
震災後しばらく、宮沢は歌う気力をまったくなくした。それでもまたステージに立ち始める。「この島にも、戦争で20万の人が亡くなった悲しみがあった。東北の悲劇にきっと誰よりも心を痛めているのが沖縄の人たちではないか」。そう思えた。
名曲「島唄」は呼びかける。「海よ 宇宙よ 神よ いのちよ このまま永遠に夕凪を」-。発売20周年の記念アルバムでは、「波よ 未来よ」が加わった。ライブで思わず口を突いて出たフレーズだ。「平和を祈る対象として、津波にも呼びかけたかった。問いかけたかった」 (阿部浩明)

 

 

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