9月25日てんでんこ 祈り「7」お地蔵さん

朝日新聞2018年9月19日3面:「心が安らぎ、集まれる場を」。すべての仮設住宅に50体が置かれた。 信州・松本にある臨済宗・禅処院のまだ新しいお堂はヒノキの香りが漂う。寺の名はチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世から贈られた。小さな境内には、石の地蔵菩薩たちが祭られている。赤い帽子をかぶり、首に「傷跡」のある1体は岩手県大槌町から戻ってきた。東日本大震災で被災した町の48カ所の仮設住宅に「心の支援」でお地蔵さんが置かれてきた。送り主が、住職の野口法蔵(59)だった。
きっかけは、震災から5ヵ月後の2011年8月、大槌でボランティア活動をする国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の職員、千田悦子(55)からの電話だった。「自宅にあるお地蔵さまを大槌に送ってもらえませんか」千田は09年暮れ、大学の先輩である国連職員の紹介で、野口の主宰する座禅断食に参加した。後日に自宅も訪ねた縁だった。千田はアフリカの難民キャンプの運営調整などをする緊急人道支援のプロ。帰国して手術療養中に震災が起き、個人の資格でNPO法人の活動に加わった。
避難所から仮設住宅に移る非難生活を支えながら気になった。被災者が自室に閉じこもり、孤独を深めていた。「心が安らぐようなものを中心に人が集まれる場が必要だ」町は津波とその後の笠井で壊滅的な被害を受けた。犠牲は人口の1割に及ぶ。リアス海岸なので平地が少なく、仮設住宅は48カ所に分散して建てられた。入居先を抽選で決めたため、隣近所のつながりも失われた。京都市出身の千田は楽しかった地蔵盆を思い出した。石か岩、道祖神かお地蔵さんはどうか。地蔵なら宗教色は薄い。この提案に、所属する地元NPOも賛同してくれた。庭に地蔵を祭る野口を思い出して連絡した。
届いた2体を仮設住宅などに置くと、花や数珠が添えられた。「復興地蔵」の木札や毛糸の赤い前掛けも。千田は再び依頼する。「全ての仮設住宅に置きたい」野口が石材店に頼んでつくった48体が大槌に運びこまれたのは11年10月だった。計50体。足元には写経を納めた竹筒を埋めた。野口は仮設住宅を回り、お経を唱えた。お地蔵さんに手を合わせる2人の女の子がいた。身近な死に初めて接して何かを考えているように、野口には見えた。
(山浦正敬)

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