9月23日 限界都市 始発のまち久喜・青梅、5年で5万円

日本経済新聞2018年9月16日1面:首都圏所得減のドーナツ 迫られる「脱・ベッドタウン」 かつて栄えたベッドタウンの衰えが際立ってきた。市区町村別に2011~16年の住民所得を調べると、首都圏の郊外でドーナツ状に減少が続いていた。団塊世代が年金生活に入り、働き手も集まらないからだ。上昇に転じた都心部などとの違いは鮮明で、若い世代を呼び込む工夫が要る。総務省の「市町村課税状況等の調」をもとに、納税義務のある住民1人当たりの課税対象所得を集計。5年前と比べた。増減を地図で色分けすると所得が減っている自治体がドーナツ状に浮かんだ。沿線の始発駅があるまちが多い。
団塊退職の余波 その一つ、埼玉県久喜市は5.4万円減った。東武伊勢崎線の久喜駅は東京メトロ半蔵門線相互乗り入れする始発駅だ。都心まで1時間強だが、少し歩くと空き店舗や空き家が目につき、お年寄りの姿も多い。市の人口は約15万4千人で、5年前とほぼ同じだ。だが、高度成長期にマイホームを求めて移ってきた団塊世代が退職。15~64歳の生産年齢人口は約8千人減り、65歳以上は約9千人増えた。この住民構造の変化が所得減の大きな要因だ。同じ現象が茨城県取手市、埼玉県飯能市にみられる。いずれも1960~80年代にかけて公営や民間の団地建設が相次ぎ、人口が膨らんだ「始発のまち」だ。
国税調査のデータを視覚化するとはっきりする。2010~15年の間に65歳以上の人口割合が5㌽以上増えた自治体を地図にしたところ、似たドーナツがあらわれた。久喜市は5.9㌽増加していた。取手市は6.8㌽、飯能市は5.2㌽7増えた。産業構造の変化が重なったケースもある。JR青梅線の始発駅がある東京都青梅市は5年で1人当たり所得が4.7万円減った。12年にルネサスエレクトロニクスが半導体工場を閉鎖、17年には東芝がノートパソコンの拠点を閉じた。「中堅企業の転出も相次ぎ、働き盛りの若い世代の雇用を吸収する職場が減った」(青梅商工会議所)
首都圏は都心にいくほど1人当たり所得が伸びるが、ドーナツの外にある北関東のまちでも所得増はある。栃木県佐野市は5年間で13.0万円、群馬県太田市は24.2万円増えた。いずれも製造業の集積地で、JA共済総合研究所の古金義洋氏は「平均給与が高い製造業の雇用者数の増加が寄与した」と分析する。ベッドタウン頼みのまちが取り残されるドーナツ現象は関西圏にもみえる。大阪市や神戸市で所得が増えるなか、兵庫県三田市や奈良県などのベッドタウンは減少し、格差が生じている。
「新陳代謝」促す 日本総合研究所の蜂屋勝弘氏は「自治体間の税収差が広がれば、いずれ福祉や教育など行政サービスの違いが生まれる」と懸念する。サービスを維持できなければ若い世代ほどまちを離れ、税収がさらに落ち込む。この悪循環を断ち切るには、住民の新陳代謝を促す施策が要る。
不動産開発の山万(東京・中央)が1971年に開発を始めた千葉県佐倉市のニュータウン「ユーカリが丘」の手法は参考になる。エリア内で住民が山万の分譲住宅に引っ越す場合、既存住宅を査定額の100%で山万が買い取り、改修して新築の7割程度の価格で再販する。子どもが独立した夫婦が一戸建てから駅前マンションなどに移り、若い世代が改修住宅を買うといった好循環をめざす。商業施設や工場を誘致して挽回を狙う従来型の施策は、撤退リスクと隣り合わせだ。行政と住民が一体となって住民誘致の新しいモデルをつくる必要がある。
(栗原健太、清水正行、安田翔平)

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