9月23日 未来ノート スポーツクライミング 野口啓代

朝日新聞2018年9月16日14面:本気になる魅力 努力報われる喜び知った 中学に入学する前の春休み、野口啓代は初めて大会に挑戦した。全日本ユース選手権。「選手層が薄かったから、数人しか出ていなかった」と控えめに振り返るが、初出場で優勝をさらった。12歳の少女が年長の中高生を片っ端からねじ伏せる快挙だった。
ただ、「そんなに練習して優勝したわけじゃなかったから、喜びはあんまり」。手軽につかんだ成功体験は、むしろマイナスの影響が大きかった。「練習しなくても勝てちゃうんだな、と。結局、もっと練習しなくなった」。父・健司さんも、中学時代の野口の練習態度を「ちゃらんぽらんだった」と苦笑まじりに語る。当時のスポーツクライミングは、今よりずっとマイナーな存在だった。「友達が知らないことをやっているのが、ちょっと恥ずかしかった」と野口。「(クライミングを)いちいち説明するのも面倒だし、中学の時は私、いつやめるのかなって思っていた」転機は高校1年の時に訪れた。ドイツで開かれる世界選手権に初挑戦することが決まった。「一応、日本代表。ビリになったらやばい」。消極的な動機だったが、約2ヵ月間、初めて本気で練習に取り組んだ。
「それまでは週1~2回、ちょっと登るだけだった」という生活が一転、「学校から帰って、まず練習。ごはんを食べたら、もう一度練習」。健司さんに伴走を頼んで、走り込みまで徹底した。そうして挑んだ世界選手権で銅メダルを獲得。表彰台で感じた喜びが、その後の人生を変えることになる。「順位よりも、努力が報われる感覚が本当にうれしかった」。本気で頑張ったことが実を結ぶ心地よさを知ったという。もっと頑張ったら、とっと良い成績が出るんじゃないかー。「初めて自分から、もっと登りたいって思えた」。ここから野口は、いよいよクライミングにのめり込んでいく。(吉永岳央)

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