9月22日 世界の債務10年で4割増

日本経済新聞2018年9月15日1面:リーマン危機10年 マネー、成長に回らず 100年に1度の危機と呼ばれたリーマン・ショックから15日で10年になる。強力な金融緩和が続た影響で、世界の債務は2.7京円と危機前を上回って最大規模に積み上がった。世界経済は比較的高い成長を続けているものの、危機がぶり返すリスクを拭い去れないでいる。「次の金融危機が近づいているのは確実」。米国出身の著名投資家ジム・ロジャース氏は警戒する。世界的に債務が増大し、不測の事態が生じかねないとみるからだ。国際金融協会(IIF)によると、世界の債務残高(政府、企業、家計、金融機関)は2018年3月末で247兆㌦(約2京7000兆円)。08年末比では75兆㌦(43%)増加した。
景気、伸び鈍く 一方、世界の国内総生産(GDP)の合計額は24兆㌦(37%)増にとどまり、GDP比でみた債務規模は2.9倍から3.2倍に拡大。金融危機の遠因となった「『稼ぎ』に見合わない規模の債務を抱える」との問題は悪化しているのだ。債務増加と引き換えにばらまかれたマネーの多くは金融・資産市場に向かった。世界全体でみて株式時価総額は17年だけで6%増加し、同年末には281兆㌦に達したと英不動産大手サヴィルズは試算する。
高齢化などを背景に世界経済の成長力が鈍化し、利益を見込める投資機会を見つけにくくなっているためだ。経済協力開発機構(OECD)によると世界の潜在成長率は低下傾向で18年は1.81%と90年(3.26%)水準を大きく下回る。主体別では企業の債務増加(28兆㌦)が目立つが、やはり実体経済への寄与度は弱い。
企業の増加分の3分の2を占めた中国。南西部の貴州省では地方政府傘下の投資会社「黔東南州凱宏資産運営」が7月、「理財商品」と呼ぶ金融商品約50億円強の償還に行き詰った。老朽住宅の再開発など低収益な案件に資金を投じたためだ。こうした債務不履行はじわじわ増えている。先進国でも資金は成長投資には回りにくい。米国ではスターバックスが6月までの1年間に49億㌦の自社株買いを実施した。資金面を支えたのは同期間の発行した29億㌦分の社債だ。政府の債務も29兆弱増えた。危機後に米欧日中などが大規模な財政出動を実施。その後の金利低下で財政規律が緩み、債務の増加に拍車がかかった。トランプ政権の大規模な減税・歳出拡大が響き、米財政赤字は2020会計年度(19年10月~20年9月)に1兆㌦を突破する見通しだ。
「影の銀行」台頭 「貸し手」の顔ぶれは大きく変わった。金融規制の強化で銀行の存在感は薄れ、金融システムの「中核部」の守りは堅くなった。代わって台頭したのが資産運用会社や年金基金、ヘッジファンドなど、緩い規制のもとで資金を供給する「影の銀行」とも呼ばれる存在だ。新興国国債など高リスクな債務の保有を増やしており、「新たな危機」の発火点となる恐れがある。足元で世界の景気は拡大基調になる。貿易戦争などのリスクを抱えつつも、米国の大規模減税などが追い風になっているためだ。そうしたなかで米欧は金融政策の正常化を探るが、地力の衰えた世界経済への影響は読みづらい。債務が積み上がり、金利上昇への耐性も落ちている。かといって、緩和路線に戻るなら債務膨張という副作用がさらに強まってしまう。危機から10年を経て、世界経済のカジ取りは一段と難しくなっている。(編集委員 松崎雄典、ベルリン=石川潤)

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