9月19日てんでんこ 祈り「3」社会運動

朝日新聞2018年9月13日3面:何百という遺体を前に読経し、身元不明の遺骨も引き取って供養してきた。 「私を動かしている原動力は1286人もの犠牲者を出したあの惨事です。もう二度とあのような大惨事を繰り返してはならない。悲しみをこれ以上増やしてはならない」東日本大震災で人口の1割近い住民が亡くなった岩手県大槌町。船越湾を望む高台にある曹洞宗・吉祥寺住職の高橋英梧(46)は8月17日、盛岡市の岩手県庁での記者会見で、涙を浮かべながらその心情を吐露した。町職員だった長男(当時29)を旧役場庁舎で失った女性(64)とともに、高橋はこの日の朝、住民訴訟を提起したばかりだった。津波の直撃を受けて破壊された旧庁舎の解体を進める現町長を相手取り、解体工事と工事への公金支出差し止めを求めたものだ。
町の中心部で、大きく破壊された外壁を見せつける旧庁舎を震災遺構としていったん保存し、なぜ町民への避難指示・勧告も発令されないままに多数の死者が出てしまったのかの検証を進め、次世代への教訓にしてほしい。書名運動もして町議会に訴え、住民監査を請求してきが、ことごとぐ退けられた。人々の平和と安寧を祈るべき僧侶として、こうした社会運動は正しい選択なのかー。自問し続けてきた7年半でもあった。しかし、提訴の会見場でも、高橋の脳裏に焼き付いて離れなかったのは、震災直後から遺体安置所をまりながら何百という傷ついた遺体を前に読経して歩き、身元不明の遺骨も含めて引き取り、供養してきた日々だった。「こんな思いは絶対に二度としたくない。そのために何をしなければならないのかを考えてきました」と、穏やかに語る。
「人は本来、大切な家族や愛する人に見守られながら、お別れの時間を共にして旅立っていくべきものなのです。それを手助けするのが宗教者の役割ではないですか。”葬式仏教”と揶揄されてもいい。安らかなふつうの死を迎えるのは、万人の権利です」 その時、それが突然に断ち切られる事態が、あまりにも大勢の人に襲いかかった。「まるで戦争のようだった」。大槌町でも体験者のお年寄りは口々に言う。戦争は人災だ。地震や津波は天災だが、人災が絡んで被害を広げたのなら、これからは人の努力で防がねばならない。それが祈りだ。高橋は言う。「まだまだ多くの人たちが、お別れを終えていないのです」 (本田雅和)

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