9月17日 スルガ・ショック「上」

朝日新聞2018年9月12日7面:創業家の威光断っても 幹部刷新しきれず白けた行内 スルガ銀行(静岡県沼津市)の若手行員のもとに7月中旬、1通のメールが届いた。。全行員にあてられたもので、こう記されてあった。「経営者としてこころよりおわび申し上げる」「スルガ銀行で働いていることを誇りに思い、安心して仕事できるよう経営が責任を持ってこれからの道を必ずつくりあげていくことを約束する」「創業以来幾多の困難を乗り越えて今日に至ったように、全社員の心をひとつにし、共に歩みを進めていこう」 差出人名は、創業家出身の岡野光喜会長兼CEO(最高経営責任者、当時)。1985年の頭取就任以来30年超も経営トップの座を占めたが、現場の仕切りは実弟の元副社長(故人)に任せることが多く、こうしたメールが届くのは異例だった。行員は「米山明広社長(当時)は辞任させても、自分は経営トップに居座り続ける意欲のあわられ」と受け止めたという。メールには「順次皆さまのもとに伺い、忌憚のない意見、おもいを聞き、未来への行動や変化に反映していきたい」とも書かれてあった。岡野氏が営業現場を訪ねることなど今までほぼ皆無だった。
だが現場訪問はないまま、8月下旬に行員は「岡野氏が辞任の見通し」とのニュースをメディアで知った。辞意が報じられたのは、第三者委調査や金融庁検査が大詰めを迎えた時期と重なる。調査や検査の厳しい内容が次第に明らかになり、経営責任を問う声が高まっていた頃だ。第三者委が今月7日公表した調査報告書は、一部の執行役員や支店長を含む多数の行員が資料改ざんなどに関与し、不正は「組織的」と認定した。営業現場には無理なノルマが課され、壮絶なパワハラで行員らは不正に駆り立てられた。審査部門は営業部門に威圧され、機能不全となって融資案件の99%を承認していた。
「極端なコンプライアンス(法令や社会規範の順守)意識の欠如が認められ、企業風土の著しい劣化があった」。第三者委はそう指摘し、不正を放置した経営陣には、善管注意義務(取締役としての注意義務)違反や経営責任があると認定した。第三者委の中村直人委員長(弁護士)は「大事な情報は何も上がってこない。(経営陣は)雲の上で下界を見ていた」と言い表した。岡野氏の経営責任は「最も重い」と断じられた。報告書は、営業部門が暴走した背景に創業家の威光があったとし、今後は創業家と経営の関係を断ち、人事にも介入させないことも提言している。
一方、金融庁の検査では、スルガ銀が創業家の関係会社に数百億円を融資し、一部の資金の流れが不透明になっていることも判明した。スルガ銀は第三者委の報告にあわせ、岡野氏や米山社長らを退任させ、取締役の有国三知男氏を社長に昇格させた。有国氏は7日の会見で「調査結果を真摯に受け止め、企業風土刷新に努力していく」と語った。ただ、有国氏も第三者委に「経営責任は免れない」と指摘された立場だけに、校内では白けた反応もある。「パワハラで知られた人や不正への関与が疑われる人が経営幹部に残った。彼らに何を言われても全く響かない」(中堅行員)第三者委の報告書には、こうも記された。
「企業風土がここまで劣化し改善の希望もない状況だと、通常の対策では回復は困難だ。他の企業と統合するか、経営層の総退陣等で、新しい人材が新しい風・価値観を持ち込まない限り自力では変われない」再建の道筋は、今もなお見えないままだ。(藤田知也)
◇抜群の高収益で、一時は金融庁長から地銀の「優等生」とたたえられたスルガ銀行。しかしその高収益は、役員も含む組織的な不正でもたされたものだった。ショックに揺れる銀行内と、顧客、、地元・静岡のいまを3回にわたり報告する。

朝日新聞ASAの伸光堂西部販売 森林文化協会

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