9月15日 未来ノート スポーツクライミング 野口啓代

朝日新聞2018年9月9日26面:ルーツは木登り 父が牛舎改装 自宅に壁 「庭の木は数え切れないくらい。それでも子どもの時に全部登りました」と野口啓代(29)は笑う。茨城県の実家は当時、乳牛約400頭を飼育する酪農を営んでいた。敷地は3万坪超。自然に囲まれて育った少女にとって、木登りは当たり前の遊びだった。とにかく高い所に登りたがる。そんな姿を父・健司さん(54)もはっきりと覚えている。4歳の時、工事中で骨組みだけの牛舎の屋根に、はしごで勝手に上がったことがあったという。高さ約5㍍。「『危ないぞっ』って言っても、啓代はニコニコ笑っていた」スポーツクライミングとの出会いは偶然だった。小学5年の初夏。家族旅行で訪れたグアム島のゲームセンターで、大木を模した垂直のコースを上るアトラクションに挑戦した。ロープをつけて10㍍を登り、「自分の力で高い所へ行ける感じが楽しかった」と野口。木登りの進化形のようなスポーツがそこにあった。
実はクライミングの魅力に強くひかれたのは、一緒に挑戦した健司さんも同じだった。ただ、酪農は休みが取りづらい。ならばと、100万円の予算で牛舎の一部を改装し、クライミング壁を自宅に作ってしまった。野口が中学1年の時だった。当時はクライミングジムなど少ない時代。グアム旅行以降、月1回程度のジム通いを父子で続けていたが、自宅に壁ができたことで野口も自由に登れるようになった。「だからって、毎日登っていたわけではありません」と言うが、環境が急成長を促していく。コーチはいないため、登り方は我流だ。ノートに記録しながら、中学生の野口は黙々と壁に向き合った。クライミングは力勝負に見えて、頭を使う競技。体をどう動かせば、壁を攻略できるのか。健司さんが言う。「小さい頃に自分で考え、解決する訓練を重ねたことが今に生きている。テクニックを覚える前に、登る力そのものを鍛えたのがよかった」(吉永岳央)

 

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