9月13日てんでんこ 西日本豪雨「17」市長の苦悩

朝日新聞2018年9月7日3面:「非難してください」。市長の力強い声が、スピーカーから真備町地区に響く。 「小田川の水位が急激に上がっています。ただちに避難してください」 倉敷市長、伊東香織(52)のいつになく力強い声が、コピーカーから雨の降り続く真備町地区に響く。呼びかけは避難準備・高齢者等避難開始を発表した7月6日午前11時半に始まり、地区の北側に避難指示を出した翌7日午前1時半すぎまで続いた。小田川と3本の支流が決壊し、市街地の大半が水没。泥水が引くと、家の中や周辺から相次いで遺体が見つかる。その数51人。
「一人ひとりの方を思うと胸が張り裂ける思いです」。1週間後の14日、記者会見の場で伊東は涙ぐみ、声を詰まらせた。真備町地区に伊東はゆかりがある。江戸時代にこの地を治めた岡田藩主・伊東氏は先祖といい、墓所の源福寺があるからだ。そこに何度か訪れたことがあるという。伊東が市に直接かかわるのは2003年。総務省でIT政策を担当した経験を買われ、市総務局長に招かれた。4年余りの在職中、光ファイバー網で防災情報を伝えるシステムの実証実験に携わる。伊東が避難を呼びかけたシステムの土台になったものだ。08年、市議らに担がれ、当時女性として全国最年少の41歳で市長に。倉敷は中央を高梁川が流れ、沿岸部に埋め立て地が広がり風水害が起きやすい。防災を施策の柱の一つに据えた。
高潮や浸水に備え、排水ポンプの改修や水路の土砂撤去を進めた。地域単位だった防災訓練は。防災意識を高めてもらうため、市内で一斉に実施するように改めた。13年からは「中国治水期成同盟連合会」の会長も務める。中国地方の河川改修の早期実現を国に求め、真備町地区にたびたび水害を引き起こしてきた小田川の改修も強く訴えていたが、間に合わなかった。被災から1ヵ月。市は復興に向け動き出す。8月4日に、1階が水没した真備支所で窓口業務を一部再開した。今月3日には、復興計画の策定や被災者の支援に取り組む「災害復興本部」を立ち上げた。本部の設置を発表した伊東は、こう力を込めた。「みなさんに真備に帰ってきてもらえるよう、復興に向けた歩みを一緒に進めていきたい」。発生以来、着続けている防災服を脱ぐ日は、まだ先だ。 (村上友里)

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