9月13日 進む原付離れ

東京新聞2017年9月8日24面:「遊びの文化」消える? 身近な足として親しまれてきた原付きバイクの生産中止が相次いでいる。9月から排ガス規制が強化されたことや、販売の低迷による採算悪化が背景にある。50cc以下のバイクの生産や開発で、ライバル関係のホンダとヤマハ発動機も手を結んだ。先細りの流れは止められないのか。
ホンダは8月、愛らしいデザインで人気を博した原付きバイク「モンキー」(排気量50cc)の生産を終え、半世紀の歴史に幕を下ろした。2009年に閉園した同社系列の遊園地「多摩テック」(東京都日野市)で使われた車体をベースに1967年に発売され、昨年末まで約60万台を生産したロングセラーだ。
8月26日には、500台限定で最終モデルの販売抽選会が開かれ、用意した台数の90倍に当たる約4万5千人から応募が殺到した。小学生の時、多摩テックで初めてモンキーに乗ったというバイクショップ経営の中島好雄さん(69)=埼玉県新座市=は「プラモデル感覚で、エンジンやサスペンションをいじり、見ても乗っても楽しめる。バイクの根本にある『遊び』の文化の象徴だった。一つの時代が終わった思いだ」と悲しむ。
背景には、9月生産分から強化された排ガス規制がある。一酸化炭素や窒素酸化物など、汚染原因となる物質を大幅に減らすことが求められ、浄化装置やエンジン改良の対策が必要となった。ホンダは原付きの「リトロカブ」の生産も終えた。広報担当者は「環境対応は技術的に可能で、対策を施した車種もある。だが、対策によるコスト高やモデルの入れ替えなど総合的に判断した」と説明する。
国内の二輪販売は長く低迷してきた。普通免許を取得すれば乗れる「原付一種」の排気量50cc以下のバイクに限ってみても、国内出荷台数は1982年の278万4千台をピークに減り続け、2016年は16万2千台と最盛期の6%にまで縮小した。自動車評論家の国沢光宏氏は「バイクが飛ぶように売れた80年代、原付きは数万円で買える『入門編』のような存在だったが、今は新車で20万円程度の高級品となった。これでは16歳で免許が取れても、とても手が出せない」と若者のバイク離れを指摘する。
50cc以下のバイクは日本独自の規格で、海外の主流は110cc以上。メーカーにとっては輸出に活路を見いだせない上、1台当たりの利幅が少なく、採算性が悪い。「メーカーも利益の出るアジアなどの海外に目を向けた。二人乗りができず、時速30キロの速度制限もある。業務需要は残るが、全体としてニーズが失われつつある」(国沢氏)今年3月には、かつて「HY戦争」と呼ばれる激しい販売競争を繰り広げたホンダとヤマハ発動機が、50ccスクーターのOEM(相手先ブランドによる生産)供給などで業務提携。ヤマハ発は台湾で「ジョグ」「ビーノ」を生産していたが、これを中止し、来年をめどに熊本県にあるホンダの工場から後継モデルの供給を受ける予定だ。原付きバイクを選択する幅も絞られつつある。
ミニバイク専門誌「モトモト」の山ノ井敦司編集長は「原付きは速度が遅い分、まちなかをコトコト走る楽しみもある。10年後も消えないでほしいけど・・」と願う。出前の中島さんも「実用性にとどまらない楽しさこそ、バイクの魅力だ。50ccのラインアップが減れば、若者が乗る機会もますます減る。メーカーには経済効果だけでなく、日本のバイク文化を大切にしてほしい」と訴えた。(安藤恭子)

朝日新聞ASAの伸光堂西部販売 森林文化協会

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