9月10日 平成とは 天安門事件「8」完

朝日新聞2018年9月4日夕刊12面:劉暁波が目指した高み 「中国共産党は毛沢東時代から鄧小平時代まで、独特の『中国の特色を持つ社会主義国』論を展開してきた」 天安門事件から4カ月。1989年10月1日、中国は国慶節(建国記念日)を迎える。私は9月28日付の特集記事「建国四十年の中国」を、こう書きだした。共産党はイデオロギー政党として「理論」を前面に掲げ、時の最高権力者の権威付けのために「理論」を使ってきた。
あれから28年。再び「理論学習」の時が来た。2017年10月の第19回党大会は、党規約に「習近平の新時代の中国の特色ある社会主義思想」を新たに組み入れた。権力基盤を固めた党総書記の「習近平」の名前と「新時代」の2語を加えた。略すと「習時代思想」にでもなろうか。
政治から文化まで、党が全てを指導して「社会主義現代化強国」をめざす。全体主義の近未来を描いたオーウェルの小説「一九八四年」を重ね合わせてしまった。さて、天安門事件で大きな役割を果たしたのが、昨年7月に561歳で死去した、ノーベル平和賞作家の劉暁波だ。大学講師だった劉は学生運動を指導。戒厳部隊の天安門広場突入を前に、軍と談判して学生を広場から撤退させた。
事件後の投獄を経て、劉は08年に一党独裁の放棄や言論の自由を求める「08憲章」の起草に加わる。憲章は民主憲政による中華連邦共和国の樹立を掲げた。「明君」(英明な君主)や「清官」(清廉な役人)など、お上に頼る臣民意識を捨てるよう訴えた。それは、89年の運動が到達した「世界標準」の高みだ。他方、「習時代思想」は「中国標準」の集大成といえよう。両者の溝はあまりにも深い。そこに埋もれているのは、天安門事件で犠牲になった学生や市民、そして兵士たちの若い命だ。 =敬称略 (元北京支局員・田村宏嗣)

 

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