8月9日 サザエさんをさがして

朝日新聞2018年8月4日be3面:DV 波平さん、それは犯罪です 公衆の面前で夫が妻をバーンと平手打ち。さらにまたバシッ! 掲載作を見て、記者はあぜんとした。これは明らかにDV=ドメスティックバイオレンス(配偶者や恋人からの暴力)。なのに波平をはじめ、周りの男性たちは笑顔で拍手している。DVという言葉がまだなかった時代とはいえ、あ、ありえない・・。「いや、1969年当時ならそれほど驚く光景ではなかったと思いますよ」。おののく記者にこう語るのは、DV問題に詳しい弁護士の角田由紀子さん(75)だ。
「2001年にいわゆるDV防止法ができるまでは、他人の妻を殴れば傷害罪になるのはわかるけれど、『自分の女房を殴って、なぜ犯罪に?」というのが日本の男性の普通の感覚でしたから。結婚したとたん妻を自分の所有物のように思う男性は今も多いです」角田さんは、漫画の「なつかしき情景ですなア」というセリフに注目する。「夫婦の平等をうたう憲法24条ができても、人々の意識は簡単には変わらなかった。家父長的な家制度や親孝行を重んじる教育勅語を懐かしむ人は多く、理念と実態は今もかけ離れている」
そんな社会ではDVは長く「しつけ」「夫婦げんか」と見なされ、メディアも深く掘り下げなかったという。確かに朝日新聞で「夫の暴力」と見出しにある記事を検索すると、58年に「法律相談所に相談が多い」として初登場したが、60年代を通して1本。70年代も5本、80年代も4本だけだ。実は「サザエさん」には71年2月17日にも男性が妻を殴る場面が出てくる。彼のセリフは「サトウ首相だってなぐったゾ!!」。当時の佐藤栄作首相の妻の寛子さんが「週刊朝日」(69年1月)の対談で「主人にずいぶん殴られた」と発言、海外で「ワイフ・ビーター」と大きく報じられていたのだ。が、朝日新聞は「海外報道はセンセーショナル」と報じた。
角田さんは92年、7人の女性の専門家と日本で初めてDVの実態調査を行った。そこで明らかになったのは「官僚、教師、医者、警察官、法曹関係者、僧侶、牧師など、社会的信用がある人も含め、どんな職種、階層、地域にもDVは存在する」ことだったという。93年、国連で「女性に対する暴力の撤廃に関する宣言」が採択、95年の北京での国連世界女性会議で「女性に対する暴力の根絶」が大きなテーマとなり、日本でもDV防止と被害者救済が動き出す。
DV防止法は改正を重ね、女性の人権に関する法整備は徐々に進んだ。しかし今年発表の最新の内閣府調査では、夫からDVを受けた経験のある女性は31%。3年前の前回より7.6%㌽増えた。全国の配偶者暴力相談支援センターに寄せられた相談件数も2016年度、10万6千件を超えた。近年女性から男性へのDVも問題になっているが、相談者の98%は女性だ。今は経済的な支配や精神的な虐待という形で女性は追いつめられていると指摘するのは、NPO法人全国女性シェルターネット理事の近藤恵子さん(71)。「本当に苦しい人たちは逃げまどうのに精いっぱいで声もあげられない」近藤さんはどんな関係、状況であれ、暴力は犯罪であり、許されない、暴力をふるったら処罰を受けるという社会認識を作っていく必要があると説く。「パンチきちてましたなア」と喜ぶ波平さん、あれは犯罪です。 (林るみ)

 

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