8月8日 大人になった女子たちへ 益田ミリ

朝日新聞2018年8月3日25面:帰省中にほろり 大きな揺れで目が覚めた。わたしは布団の中で横になったまま、キャーッと言った。天井の電気の笠がぶるんぶるんと揺れ、今にも飛んでいってしまいそう。先だっての大阪北部地震のとき、ちょうど大阪の実家に帰省していたのであった。わたしは揺れている電気の笠を見ながら、経験上、このあと、すべての交通機関が当面は止まるだろうと思っていた。阪神淡路大震災、東日本大震災。どちらも大阪と東京で経験し、この揺れがただごとではないことはわかった。
揺れがおさまると、別室にいた母の大きな声。「地震やで!」思わず、「知っている!」。わたしが気づかず寝ていると思ったようだった・・。幸い、うちは花瓶や傘立てが割れた程度だったが、それでも冷蔵庫のすべての扉は全開になっていた。ふたりで後片付けをしていたら玄関チャイムが鳴った。「お風呂に水をためて」ご近所さんが言ってわまわっていた。そうだった、そうだったじゃないか。過去にも大地震後は断水になったじゃないか。あわてて風呂に水を張った。ほどなくして断水になり、それは翌日の深夜までつづいた。風呂の水のおかげで、自宅トイレが使え、どうれだけ助かっただろうか。そういえば、地震後すぐに、母の携帯にご近所さんからのメールが届き始めた。ひとり暮らしの母の様子を見に来てくれる方も。
「なんかあったら、なんでも言いや」 去っていくおぼちゃんたちの背中を見送りながら、わたしは不安になっていく。東京の我が家には、懇意にしているご近所さんがいないのだった。「暑いですね」と挨拶程度。それくらいが気楽でいいなと暮らしているわけだが、母のような暮らし方への憧れもある。
東京に戻ったら、とりあえず水を買い足そう。保存食も確認しなければ。夜になって、「ご実家、大丈夫?」という東京の友人たちからのメールにほろり。帰省中だとは告げず、「大丈夫、ありがとう」と返信した。
(イラストレーター)

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