8月8日 原発ゼロをたどって9

朝日新聞2018年8月3日夕刊2面:民意推進側を悩ます 原発・エネルギー政策の議論から逃げようとするのが安倍政権の特徴でないか。端的なのは有識者会議の構成だ。政権を奪還した2012年暮れの衆院選から約2カ月後の13年3月1日。当時の経済産業相・茂木敏充(62)は第4次エネルギー基本計画をまとめる有識者会議の委員を発表した。それは民主党時代の25人を15人に縮小、「脱原発派」とみられた委員を8人から2人に減らすものだった。
会見でこの点を聞かれた茂木は「専門性を中心にして議論をしていただく」などとかわしたが、原発の是非の論議を封じ込もうとしたのは明白だった。こうしてつくられた14年の第4次計画で、原発は「重要なベースロード電源」という位置づけを獲得した。さらに17年8月、第5次計画の議論を始めた有識者会議では、「脱原発派」委員は1人に。その「1人」が日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会常任顧問の辰巳菊子(70)だった。
「あのメンバーで結果が見えていると思いました・・私は国民の代表との立場で参加しましたが、マイナーというか、独りぼっちでした」今年5月、「脱原発・新しいエネルギー政策を実現する会(eシフト)」などが開いた集会で辰巳はそう語った。事実、7月に閣議決定された第5次計画は第4次に続き原発を維持するものになった。
が、それは民意の裏打ちを欠けていた。朝日新聞の今年2月の世論調査では、停止中の原発の運転再開について反対が61%、賛成が27%。「反対」が「賛成」のほぼ倍というのは、ほかの報道機関の調査でも大差ない。eシフト運営漢字の桃井貴子はこう見る。「民意を聞けば、『原発ゼロ』になる。だから原発維持で行くには民意無視を決め込むしかない」先の国会で「原発ゼロ基本法」を審議しなかったのも、原発をめぐる議論の拡大を畏れたからではなかったか。実は推進側は「原発ゼロ」の声が怖くてならない。
今年6月10日投開票の新潟県知事選。原発推進維持路線を取る政権与党の自民、公明が支持する陣営が開票日前日9日、地元紙に出した1㌻の広告が話題になった。「脱原発の社会をめざします。・・再稼働の是非は、県民に信を問います!」ー焦点の東京電力柏崎刈羽原発の再稼働について慎重姿勢をそうアピールした。
新潟県では前回16年10月の知事選で再稼働に慎重な野党系候補者が当選。そこで今回、与党系は再稼働の争点化回避に動いたと報じられた。野党系の選対幹部の新潟国際情報大教授・佐々木寛(52)は話す。「新潟では『脱原発』の姿勢でないと勝ち目がない。だから向こうはそんな戦術を取るしかなかった」重い原発のリアル(現実)。もはや7年前の事故をなかったことにできない。いまも使用済み燃料問題ひとつ解決できない。そして「原発ゼロを」という多くの人の思いが推進側を苦悩させる。  =敬称略 (小森敦司)

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