8月3日 「グローサラント」広がる

日本経済新聞2018年7月28日夕刊1面:本格料理スーパー店頭で 食品スーパーで販売する食材を使った料理をその場で提供する「グローサラント」と呼ぶ店が増え始めた。食材を試し、味わい、気に入ったら買って帰れる。主婦やシニアに加え、会社員や家族連れをも魅了する。欧米で流行する、「イートイン」の一歩先を行く新しい食のスタイルは日本の暮らしに根付くか。JR大阪駅の商業ビル「ルクア大阪」の地階。平日の昼に近隣で働く女性が押し寄せるのが、関西の高級スーパーの阪急オアシスが4月に開業した「キッチン&マーケット」だ。手回しで作るピザにハム・チーズの切り売り、マグロの解体とにぎわいは市場のよう。食材売り場にレストランが隣接し、店頭に並ぶ食材で作った料理やデザートが食べられる。初来店した鈴木絵里さん(25)は「外国を歩いているみたい。旅行地での買い物感覚だ」と驚いた。
「ちょい飲み」も 平日昼間はOL、少し過ぎれば子連れ客が増える。夕方にはワインと惣菜を買い「ちょい飲み」を楽しむ会社員も多い。平日は早々から酒を飲むシニア、週末は家族客でにぎわう。8割が女性客だ。開業から3ヵ月で約50万人が訪れた。京都府から友人と来た西田綾子さん(36)は総菜をつまみにビールを飲み比べ。「好きな物を自分のペースで楽しめるからいつ来ても違う発見がある」と魅力を語る。人気は中トロのスシ(税別1貫100円)やワンボウルのサラダバー(税込み500円)など。精肉を買うと焼き肉ができるサービスもあり1パック3千円する牛肉も売れる。阪急オアシスの松元努取締役は「ちょっと良い品や珍しい品など関西一円から来た人も楽しめる商品を扱うのが人気の秘訣だ」と語る。
スーパー業界は全国の既存店売上が2年連続で減収だった。外食の機能も取り込んだ新形態の店舗で客を集め、物販と飲食の相乗効果で売上高を伸ばしたい思いがある。国内でいち早く取り入れたのが高級スーパーの成城石井(横浜市)だ。昨年9月に開業した「トリエ京王調布店」(東京都調布市)は開業からの客数が100万人を突破。OLや主婦、高校生から80代のシニア客まで訪れる。理由は飲食メニューのお値打ち感だ。スーパーの旬の食材の調達力と食材を加工する自社工場の活用でコストを抑制。「外食店で出す同等の料理より2~3割は安い」(五十嵐隆執行役員)。初ランチに主婦2人組は「ヨーロッパ産フレッシュサマートリュフバーガー」(税別990円)を注文。「外食店なら1700円はするね」などと盛り上がった。メニューにある食材の9割は店頭で買える。使用食材を示す案内板と共にレシピも置き購入を促している。
「食事・購入に循環」 全国で導入を進めるのがイオンだ。4月に広島市に開いた「イオンスタイル西風新都」内の店舗は同社最大規模の280席を用意。作りたての生パスタやステーキが食べられるブースを9つ設けた。他の施設で飲食と物販が離れていた点を修正。ステーキ店の横で自社ブランドの牛肉やソースを販売。スシを出す鮮魚店の脇には地魚を扱う鮮魚コーナーを置くなど、料理と物販が交互に体験できるよう工夫した。この結果、食後に食材を買い求める客が増えた。「食事から購入への循環がつくれた」(同社) 福井県で酒販店「リカーワールド華」を営む華(福井市)は4月開店の店舗にカフェを併設した。輸入チーズや生ハムを使ったサンドイッチなどを提供する。客は近隣住民が多いが、週末には広域から訪れる。地方ではまだ珍しい業態に「都会的」との評価も多く、にぎわっている。
「体験」提供に活路 スーパー各社がグローサラントに相次ぎ挑むのは、コンビニエンスストアなどだけでなく、ネット通販への強い危機感がある。成城石井は「品質の髙い食材をその場で提供し、旬や鮮度を五感で感じてもらう」、イオンも「非日常体験の提供が来店動機の一つになる」と語るなど「体験」に活路を見いだしている。働く女性や単身世帯の増加で、総菜などの中食市場は2017年に10兆円を超えた。調査会社エヌピーディ・ジャパン(東京・港)によると、スーパー内のイートイン市場も17年は1172億円と14年から28%増えた。りそな総合研究所の荒木秀之主任研究員は「中食の成長が続く中でグローサラントの将来性は高い」と指摘する。店が売りたい食材と客が食べたい料理のずれや接客サービスの質、陳列の明快さなど課題はある。それでも消費動向に詳しい評論家の牛窪恵氏は「ネット全盛だからこそ、料理のお薦めや食材の安心安全について一言聞けるグローサラントの『顔の見える関係性』は大事。シニア社会が進む中で時代が求めている」と指摘する。(荒尾智洋、平嶋健人、岡村麻由)

朝日新聞ASAの伸光堂西部販売 森林文化協会

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