8月29日てんでんこ 西日本豪雨「10」混乱の避難

朝日新聞2018年8月25日3面:定員の10倍超の2千人。「ほかの避難所に行ってくれ」。呼びかけ続けた。 強まる雨の中、上り坂にヘッドライトの光が連なる。倉敷市真備町地区の北部、高台にある岡田小学校。避難所として解放された体育館に向かう車が列をなしていた。「ここはいっぱい。ほかの避難所に行ってくれ」。坂の下で交通整理にあたっていた黒瀬正典(65)は呼びかけ続けた。岡田地区まちづくり推進協議会の会長。避難所の運営を手伝いに来て、混乱に巻き込まれた。
住民が押し寄せ始めたのは、7月6日午後10時すぎ。その直前、真備町地区全域に避難勧告が発令されていた。それまで数十人しかいなかった体育館は、1時間も経たないうちに満員状態になった。岡田小の避難所としての定員は、体育館だけで受け入れる想定で180人。しかし深夜には、避難者が10倍超の2千人近くに膨れあがる。校長室と放送室を除くすべての教室が解放され、家庭科室では調理台の間で横になる人もいた。
夜通しで雨音が体育館の屋根をたたく。隣の岡山県総社市で起きたアルミ工場事故の爆風で窓ガラスが割れ、悲鳴が上がる。避難情報を伝えるエリアメールがスマートフォンに届くたび、受信音が一斉に鳴り響く。皆が寝付けぬまま夜明けが近づく。状況は、真備町地区の他の避難所も同じだった。薗小学校には定員の4倍を超す800人、二万小学校にも3倍の500人が殺到。土砂災害のおそれがあった真備総合公園には600人が集まり、避難所に指定されていない吉備路クリーンセンターにも1千人が駆け込んだ。人口2万3千人の地区全体が、混乱の渦にあった。
岡田小の体育館で翌7日朝を迎えた黒瀬は、外の様子を見に校門を出た。車を誘導するため立っていた場所は、泥水に沈んでいる。届いた新聞を開き、被害が地区の広い範囲に及んでいることを知った。「えらいことになった。避難生活は長くなるかもしれない」地区内の避難者がいまも約1千人。岡田小には150人がいる。体育館では、再生紙でできた菅と布で格子状に仕切られた「家」に「あ1」「い3」と手書きの表札がかかる。元の暮らしをいつ取り戻せるのか。多くの人が見通せていない。 (佐藤恵子)

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