8月29日 サザエさんをさがして 住宅ローン

朝日新聞2018年8月25日be3面:借金で支え続ける日本経済 漫画に登場する若きパパは30代半ばくらいか。住宅金融公庫(現・住宅金融支援機構)から融資してもらえることになり、「親の自分が払い終わるから安心しろ」と赤ちゃんをなだめている。定年まで勤め上げれば、十分払えると思っているのだろう。「25年」がポイントらしい。住宅金融支援機構地域業務第二部長の仲田正徳さん(56)は「この男性が建てたのは、戸建てのプレハブ住宅でしょう」という。漫画掲載時、保証期間が25年なのは簡易耐火構造。鉄骨造、ブロック造、プレハブ住宅だ。「マンションブームは70年代以降。個人の住宅で鉄骨やブロックは少ない」から、残るはプレハブだ。木造住宅の償還期間は18年。住宅を種類を問わず年5.5%の固定金利だった。
公庫の1968年版年報によると、67年の戸建てプレハブ住宅の建設数は1万9千戸で全国の新築戸数の1.5%。この男性は、なかなかの新しもの好きとみえる。民間の住宅ローンはまだ勃興期で、住宅ローンといえば公庫融資の時代。融資限度額は大きくなかった。この年、大都市とその近郊で、住宅だけなら80万円前後、土地つきで約140万円。国税庁の民間給与実態調査によれば、67年の平均年収は62万円で、上限を借りても年収の2.3倍だ。実績は35万人が応募し10万2千人が当選、実際に貸し付け契約をしたのは6万2千人。平均融資額は71万円で、平均年収の1.1年分だ。
熊田昭一さん(83)は、68年、公庫融資で千葉市に念願のマイホームを建てた。数年間、同僚との付き合い酒を控え頭金をためた。木造の一戸建てで融資額は約140万円。公庫融資のほぼ上限だった。毎月の返済額は1万円ちょっと。「返し始めた頃、月給の4分の1近くが飛んでいき、冷や汗をかいた。でも給料は順調に上がったし、5年後には石油危機による狂乱物価もあって、住宅ローンは実質目減りし、負担感はぐっと減った」と振り返る。
地価は毎年上がり続け、土地神話が生まれた。漫画が掲載された9日前に「東京23区の住宅地域の地価は全年までの11年で11倍」の記事が載った。熊田さんは「家が買えなくなるほど高くなると周りに言われ、思い切ってローンを組んで正解だった」という。高度成長期の幸せな物語だ。
偶然だが、この漫画と同じページの再下段に、東京急行(現・東急電鉄)が「東急田園ホームローン」の広告を載せている。最長10年のローンを「業界初の試みとして、融資期間を最長18年に延長する」とうたう。金利は年9.48~10.2%。18年で元金の2倍以上を支払うことになる高金利だが、高度成長期には珍しくない。融資上限は600万円で、公庫融資よりかなり大型だ。
70年代以降、経済波及効果の高い住宅投資は景気対策の柱に据えられ、景気枠拡大はその典型だった。近年は、住宅ローン控除が住宅取得を後押ししている。住宅金融支援機構が提供する35年固定金利のフラット35。昨年8万7500戸が利用し、融資額の平均は1戸2873万円。2016年の民間サラリーマンの年間給与額は平均422万円で、年収の6.8倍に当たる。国民の多額の借金が日本経済を支えている、ともいえる。(畑川剛毅)

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