8月26日てんでんこ 西日本豪雨「7」堤が切れた

朝日新聞2018年8月22日3面:「死ぬかもしれん」。庭の木に移ろうと濁流に飛び込むと泥水は首まで達した。 洪水が倉敷市真備町地区を襲い、51人の命を奪った悲劇ー。それは地区を流れる小さな川の異変から始まった。7月6日午後11時半ごろ、須増国生(57)は自宅近くの堤防の上に車を止めた。地区を東西に流れる小田川に、支流の高馬川が北から合流する付近だ。車のライトは、高馬川から堤防を滑るようにあふれる水を照らした。堤防が徐々に削られていくように見えた。
慌てて車で自宅に戻り、息子らに声をかけた。「水が来る。逃げるぞ!」。息子らを車で先に逃がし、ブレーカーを落として自宅を出ようとすると、水はひざ丈を超えていた。みるみる濁流が押し寄せ、庭の外へ出られない。胸までの高さの門柱に上がっても、まだ水が上がってくる。「バリバリ」。堤防そばの建物が壊れたのか、木材が流れてきた。足が震え、「死ぬかもしれん」と思った。少しでも高い場所へ。庭の木に移ろうと濁流に飛び込むと、泥水は首まで達した。
水をかき分け、松の木のてっぺんに登って救助隊を待った。高馬川は幅約5㍍。普段は長靴で歩けるほどの水深だ。「まさか水があふれ、堤防まで壊すなんて」。延々と水があふれ、堤防まで壊すなんて」。延々と水が流れ込み、一帯の水の深さは5㍍を超えた。同じころ、高馬川から東へ約2㌔。小田川の別の支流で、幅が7㍍ほどの末政川でも危機が迫っていた。三宅一奨(67)は、堤防上から信じられない光景を目にした。下流から上流へ水が押し寄せ、渦巻いている。日ごろは流れているかどうかさえ分からない水量なのに。
対岸の堤防から水があふれ出すと、「ドーン」という音が響き、堤が切れた。あっという間に家がなぎ倒され、流されていく。「切れた。やべえぞ」。堤防を転げるように駆け下り、同居する父と妻を連れだした。地区に住む息子の家族にも声をかけ、乗用車と軽トラックに分乗して避難した。夜が明け、高台から見た街の姿に息をのんだ。広がる泥の海の水面から、愛着のある青い屋根瓦が見え、辛うじて自宅とわかった。「あり得ないことが起こった」。小田川と支流3本の堤防が計8カ所で決壊。本流の増水でせき止められた支流の水位が上がる「バックウォーター」現象が起きたとされる。(中川竜児)

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