8月19日てんでんこ 西日本豪雨「2」土石流

朝日新聞2018年8月15日3面:小さな集落で10人が死亡・行方不明に。「100年以上前の水害は知っていたが」 7月6日午後8時前、土石流は砂防ダムを破壊し、あっという間に集落をのみ込んだ。広島県坂町小屋浦4丁目の高下幸子(49)は、長女(22)と天地川沿いの自宅を出て15㍍離れた高台の親類宅に避難するわずかの間に、背丈を超える土石流に襲われる。長女は50㍍ほど流され、土砂の山に打ち上げられて助かったが、幸子は行方不明だ。仕事で不在だった夫(54)は「家を出る時には水位に余裕があったようだ。大雨の時に親類宅に避難するのは親の代からの習慣だった。まさかこうなるとは」と話す。
4丁目第3町内会長の高下章(63)宅は、夕食中に停電し、怖くなって一家で2階に上がった。窓の外を見ると、土砂が押し寄せてきた。「助けて」。近くの女性が妻の携帯電話にかけてきたが、どうすることもできない。女性の2軒隣の住民が助けた。町議会議長の川本英輔(74)も濁流の中、立ち往生した車を近所の人と安全な場所に押し上げた。その後続の車は水没したが、車内にいた人は窓からひっぱり出した。
町は避難勧告を出し、防災行政無線や広報車で避難を呼びかけた。だが、大半の住民は逃げず、9人が死亡、1人が行方不明になった。町内会長の高下は「判断が甘かった」と言う一方で「小学校は坂の下。低い場所に避難するのは抵抗があった」と語る。海も近く、川の氾濫だけでなく高潮も不安だった。天地川左岸には、高さ2㍍以上ある石碑が二つ並ぶ。1907(明治40)年の水害の碑には、「死者46人、傷者56人 家屋流失54棟 倒潰69棟」と刻まれている。
第1町内会長の灘増男(68)は「碑は知っていたが、100年以上前だし、海沿いはどこでもこんな地形だから」と話す。決壊したダムは50年に石を積んで造ったが老朽化し、4倍の調整能力がある新しいダムが工事中だった。広島県は土砂災害警戒区域が全国で最も多い。調査対象は約5万カ所。うち約3万カ所を危険個所に指定したが、調査が追いつかない。坂町小屋浦地区も調査中で未指定だった。警戒区域を示すハザードマップは17年前に配布された後、町内会長さえ忘れていた。土砂災害は昨年、全国で1514件起きた。行政の対応を待つことなく、住民が危機感を持っていかに対処を考えておくかが、生死を分ける。
(岩田恵実、東野真和)

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