8月13日てんでんこ 九州と豪雨「17」流木

朝日新聞2018年8月8日3面:災害はいろんな要素が重なる。「だから、人間もたくさんの工夫をして備える」 徳島県南部に位置する那賀町は、綿製の9割以上が森林の町だ。林業家、橋本光治(72)の約110㌶の山には、総延長約30㌔の作業道が巡らされている。トラックでほぼすべての木の近くまで行けるため、作業の効率が良い。妻の延子(67)と長男の忠久(44)の家族3人だけで手入れする。山には、林業のなりわいと災害に強い森林を両立させる工夫がこらされている。
作業道の幅は2㌧トラックが通れるぎりぎりの2~2.3㍍。一般的な作業道より狭いが、雨が直接当たる面積が小さく、道の土砂が流失しにくい。強い風の通り道にもならない。道をつくる際に削り取る斜面が低く抑えらるため、豪雨でものり面が崩れにくい。それだけではない。強風を受ける尾根や、土の質が悪く崩れやすい場所は、広葉樹や針葉樹が共存する自然林のままにする。深さや形が異なる多様な根が地中で複雑に絡み合うことで、山が崩れにくくなるからだ。雨水の流れが集中しないように、排水路をつくる位置も見極める。忠久は言う。「災害はいろんな要素が重なって起こるはず。だから、自然を観察し、人間もたくさんの工夫をして備えるしかない」2017年7月の九州北部豪雨では、山らか流れ出た大量の流木が家や橋を壊し、被害を拡大させた。軽くてまっすぐなスギは、下流域まで一気に流れ下り、威力を増したとみられる。流木の推計発生量は福岡、大分両県で約37.5立方㍍。国土交通省が「過去最大級の流木災害」と発表するほどだった。
林野庁の調査では、山の崩壊は深さ約3㍍まで達していたところが多かった。一般的に、木の根が張るのは深さ2㍍程度まで。未曾有の豪雨に、自然林も人工林も、根こそぎやられていた。「山の表層の土砂崩壊は森林で止めることができると教えられてきたが、これでは無理」。豪雨から数週間後、福岡県朝倉市や東峰村の山に入った九州大教授、佐藤宜子(57)は驚いた。日本の森林は約2500万㌶。国土の3分の2を占める。荒廃は食い止めなければならない。森林のあり方を考える森林政策学が専門の佐藤は言う。「自然の変化をきちんと察知できる、人のなりわいを続けること。それが災害に強い山につながる」 (原篤司)

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