7月9日 若者狙う高額契約に注意

東京新聞2018年7月5日19面:モデル・俳優のレッスン費名目 若者を乗らった消費トラブルが後を絶たない。契約に関する経験と知識が乏しく、この春大学に入った新入生は特に注意が必要だ。最近は、モデルや俳優にあこがれる学生らが、レッスン費やエステ代として高額の契約を持ち掛けられるトラブルが目立っている。消費問題に詳しい専門家は「自分にとって本当に価値あるものなんか、よく考えてから契約して」と呼び掛けている。(砂本紅年)
東京都内に住む20代女子大学生は昨年5月、インターネットで「映画のメインキャスト募集」の広告を見て無料オーディションに応募した。当日は約20人が自己PRと演技の審査を受けた。翌日「最終面談をしたい」と連絡がり、タレント養成事務所へ行くと、すぐ合格を告げられ、「映画出演のために必要」と、1年間のレッスン契約を勧められた。費用は約70万円。3年間のクレジット払いのため支払総額は約95万円になる。「あなたは主役の顔だ」と褒められ、うれしくなった女子学生は、どんな映画にどんな役で出演するか十分に確認せずに、その場で契約に同意した。
レッスン開始前の同年7月、事務所の評判をネットで調べると、「エキストラに近い役しかもらえない」などと書き込みがあった。不安になって解約を申し出たが、事務所は「『中途解約しても返金しない』と規約にある」と入学金にあたる48万円の支払いを強く要求。納得できない女学生は消費者センターに相談した。
このトラブルの処理に当たった都消費者被害救済委員会は、「契約について、事務所側は、せりふがほとんどなくエキストラに等しい役になる場合もあるという重要な事実を告げていなかった」と判断。契約者の利益だけを説明して不利益になることは故意に説明しない消費者契約法の「不利益事実の不告知」などにあたるとして、契約を取り消せるというあっせん案を提示した。事務所側も合意し、女子学生は代金を支払わずに済んだ。
オーディションで巧妙に誘う モデルや俳優にあがれる学生や若者が消費トラブルに巻き込まれるケースは多い。公民生活センターなどによると、全国から毎年800件前後の相談が寄せられる。都内では、昨年度の相談件数は175件と、その2年前から倍増した。同センターによると、最近増えているのが、雑誌などの募集広告を見て、若者自らオーディションに出向くケース。主催者側が合格と伝えて喜ばせ、「主役を得るために50万~100万円かかる演劇学校でレッスンを受ける必要がある」「エステに通う必要がある」などと高額の契約を提示するという。
こうした相談をよく受けている都内の消費生活相談員によると、オーディションも3次審査まであるものも。「近親感のあるアイドルがはやったりするので、『自分もなれる』と思っている人は多い。オーディションも巧妙に仕組まれ、不信感を抱かないのでは」実際にレッスンを受け、払った金額に見合わないと気付くケースもある。契約は済んでいても、前述の女学生のように、契約者にとって不利益になるような重要な事実を告げられていなければ、契約を取り消すことができる可能性もある。そもそも、競争の厳しいタレントの世界は、レッスンを受けて有名になれるほど甘い世界ではない。都合のいい話だけでなく、契約の際にそんな現実を伝えられているかも確認するべきだろう。都消費生活センターの担当者は「レッスン内容を確認するだけでなく、多額のお金や時間をつぎ込むことが本当に自分にとって価値あることなのかも、よく考えて」とアドバイス。判断がつかない場合は、その場で契約せず、「友人や親に相談します」と言って帰ってと呼び掛けている。

朝日新聞ASAの伸光堂西部販売 森林文化協会

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