7月7日 てんでんこ自然エネ100%「18」桐の里

朝日新聞2018年7月3日3面:気がつけば木こりは2人。「山を動かす」知恵と技の伝承が始まった。 福島県の奥会津にある三島町で5月29日、三島中学の1年生5人のため「森林教室」があった。先生役は町に「桐専門員」の藤田旭美(36)と木こりの五十嵐馨(63)。「桐は軟らかくて、虫や病気に弱い。病虫害対策が必要です」。藤田は桐のさまざまな特徴を伝える。太く、真っすぐ育てるには、不要な枝芽を除く「芽掻き」も欠かせない。生徒らは五十嵐と芽掻きにも挑戦した。
山々に抱かれた三島町は古くから「桐の里」として知られた。最盛期の1970年には町内に6万本近くが植えられていた。当時の人口は4100人余。それが過疎化でいま1600人余。桐も5千本を割り込んだ。町は昨年度、桐の栽培研修や森林教室を担う常勤専門員を置き、「地域おこし協力隊」として町に移り住んでいた藤田がその任に就いた。「子どもたちにまず、桐に愛着をもってもらいたい」。代々受け継がれてきた山と人とのつながりは、それほど薄れていた。
東京電力福島第一原発事故の惨禍を経て、会津地域の人びとは2013年2月、一般社団法人会津自然エネルギー機構を設立し、自然エネの利用拡大に乗り出す。三島町で教育活動に携わり、町議経験もあった五十嵐の妻の乃里枝(56)も参加した。活動の中心テーマは「山を動かし、木質バイオマス利用の可能性を探る」。「動かす」とは、山の恵みを持続可能な形で利用し続けることだ。
しかし、乃里枝は深刻な事態に気づく。木こりがいないのだ。三島には夫の馨を含め、2人だけ。「山を動かすというけど、だれが木を切り出すのか。根本的なところから考えないと、山が死んでしまう」と馨は言った。馨と乃里枝は14年5月、木こりの知恵と技を伝える「山学校」を始めた。同年9月の山学校に会津農林高校(福島県会津坂下町)の森林環境科教諭、目黒裕(50)が来た。同科は福島唯一の林業系学科。「林業に興味をもっている子はいても、自然の中での経験がたりない」。そう感じて、自ら学びに来た。目黒は翌15年7月、今度は生徒7人と山学校を訪れた。16年からは、同高の演習林実習に馨ら木こりを招く。「人は歴史的に木をもっと利用できるんだということを知ってもらいたい」。山は動くのか。教育という息の長い営みが始まっている。(上田俊英)

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