7月31日 サザエさんをさがして

朝日新聞2018年7月28日be3面:海外での日本人の評判 「嫌われる力」がった時代 この掲載回、特に平成生まれ世代はピンとこないのではないか。「日本スゴイ」を外国人に連呼してもらうテレビ番組や、サッカーW杯での日本サポーターにゴミ拾いが称賛された報道が相次ぐ中、「海外でヒョウバンのわるい日本人」なんてどこのパラレルワールド? って思われるかもしれない。1970年生まれの記者には、わりと懐かしい話だ。海外での日本人をめぐる批判的な論調は、高度成長期からバブル末期まで長らく、こそかしこにあった。
JTB総合研究所の主任研究員、三ツ橋明子さんによると、掲載された71年ごろは海外パック旅行が普及し始めた時期。64年に海外渡航が自由化、70年に大型旅客機ボーイング747型機「ジャンボジェット」が日本デビュー。「お金のある人や留学生、政府関係などが主だった海外渡航が一般に広がった。海外で、どう振る舞えばいいのかわからない人も多かったのでしょう」と三ツ橋さんは言う。
この漫画で白人男性に邪険にされている男性はメガネにネクタイ姿。こうしたビジネスマンが海外進出をめざして赴く際は、社をあげて見送りに。「海外の空港でも商社マンが『〇〇くんバンザーイ!』とやって、『あれはなんやろうな』と思われたんちゃうんかな」と、国際日本文化研究センター教授の井上章一さん(63)は言う。
せんべつをもらい、お礼に大量のお土産を買ってくるのも「常識」。バブル期も批判の的となった「ブランドもの大量買い」の走りだ。中国人観光客の「爆買い」をあれこれ言ってなどいれない。もっとも米国人もかつて欧州で成金とやゆされ、オランダ人は英国人に数々の悪口表現を英語で作られた。経済覇権を握った国や地域が初期に通る道とも言える。強い円を背景にした評判の悪さは性的な面でも。井上さんいわく、「60~70年代は『パリのおねえさんと遊ぶには』みたいなハウツー本が結構いっぱいあった」。
70年代にパリのルーブル美術館を訪ねた際、ミロのビーナス像の前で居合わせた日本の男性グループから「ええケツしとんのう」という声が上がり、赤面したそうだ。「日本語が通じないだろう」と盛大な「旅の恥はかき捨て」を展開する例は今もあるが、性差を超えた尊重意識が乏しかった当時、女性をめぐる態度で不興を買ったのは想像に難しくない。似たような悪評は東南アジアの売春ツアーが問題になったバブル期も続いた。
マスオさんは「愛される日本人になりたい」と座禅を組んだ。「60年代に禅が米国ではやったからでしょう。ベトナム反戦運動からのカウンターカルチャーとして禅は輝き、愛される日本文化の一項目になったんです」と井上さん。なるほど! ただしマスオさんの謙虚な望みと裏腹に、傍若無人派はバブル崩壊ごろまで目立ち続けたわけだ。それが今や自画像を高めて意気軒高。どこで違ってきたのだろう。「日本は今、『嫌われる力』をなくしている。経済でも中国に抜かれた頃から、失われた誇りを取り戻せ、となっていったのでは」と井上さん。「日本スゴイ」がゆき過ぎて映るのは、「人は没落した時、低迷を自覚するがゆえにかえって偉そうになる」ためだとか。ふぅむと考え、座禅を組んでみた。自画自賛の末に、「嫌われる力」を再び発揮することのないよう願いつつ。
(藤えりか)

 

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