7月25日 ふるさと納税 故郷ケア

日本経済新聞2018年7月21日夕刊1面:返礼競争と一線 墓掃除・空き家見守り・・ 仕事や家庭の事情で帰省できない人に代わって草掃除や空き家管理を担うサービスを、ふるさと納税の返礼品に加える自治体が増えてきた。寄付金目当てに豪華な返礼品を競い合う流れとは一線を画し、遠くから故郷を思う利用者と、出身者との縁を保ちたい行政を結びつけている。兵庫県に暮らしている男性(77)は故郷の高松市に残っていた母親を数年前に亡くした。高松には先祖代々の墓がある。お盆前には手入れしておきたい。そこで使い始めたのが、高松市がふるさと納税の返礼品に加えている「墓地清掃サービス」だ。
2万円で清掃1回 2万円の寄付で1回の清掃を頼める。市シルバー人材センター7のスタッフが草抜きや墓石掃除をして花を供え、作業前と作業後の写真を郵送する。時期も自由に選べる。「高松は高速バスですぐに帰れるが、草刈り鎌を社内に持ち込むわけにもいかず困っていた。とても便利だ」。今年もお盆前に利用する予定だ。
高松市は「ふるさとを離れていても思いを寄せる人の気持ちに応える」(税務課)ため、15年に墓地清掃を返礼品に加えた。利用は彼岸やお盆前などに年7~10件。「すでにリピーターがおり、お礼の電話が入ることもある」(市シルバー人材センター)墓地清掃や墓参り代行を返礼品に加える自治体は急増している。ふるさと納税サイト「さとふる」に登録されている墓に関する返礼品は、16年3月末はわずか3件だった。それが今年7月19日時点で36件に達した。運営会社さとふる(東京・中央)は「高齢で清掃が難しくなった人のニーズをとらえている」と分析する。頼れる親族がいない人には空き家となった実家の管理も悩みの種だ。福島県須賀川市は17年8月、寄付額1万5千円の返礼品に空き家見守りを加えた。空き家の管理に困る寄付者がいると判断。市シルバー人材センターが損傷確認や玄関前の除草を担い、サービス前後の様子を市が写真付きで連絡する。
定年後に居住も 都内で暮らす同市出身の主婦(59)は一人暮らしだった母を4年前に亡くした。「なかなか帰れずに、雑草が茂ったまま近所に迷惑をかけるのが嫌だった」と、空き家見守りサービスを年3回ほど利用する。「夫の定年後、東京と須賀川で2地域居住するのが夢」と語る。
ふるさと納税は08年に始まったが、自治体が寄付金ほしさに返礼品の豪華さを競う風潮が強まった。総務省は17年4月以降相次いで通知を出し、地域再生という趣旨を尊重するよう自治体に求めた。須賀川市は通知を受けて「ふるさと納税の原点に立ち返ったサービス」(税務課)として空き家見守りを発案した。首都圏の自治体でも高齢化は急速に進んでいる。千葉県成田市やさいたま市は18年春、日本郵便が始めた「みまもり訪問サービス」を返礼品に加えた。郵便局員が月1回、高齢者の自宅を訪ねて暮らしぶりを確認し、依頼した家族に伝える。さいたま市の場合、10万円以上の寄付で6ヵ月間サービスを利用できる。ふるさと納税は特産物を返礼品に選ぶ寄付者が大半を占める。墓清掃や空き家見守りの申し込みはまだ限られている。だが須賀川市は「趣旨に沿う選択肢として、今後も掲げていくことが大切」と語る。
豪華さ重視 なお根強く ふるさとに納税の寄付額は増え続けている。総務省がまとめた2017年度の実績は前年度比28%増の3653億円だった。インターネットで簡単に申し込める総合サイトの普及や、体験を楽しむ返礼品の人気も手伝い、5年連続で過去最高を更新した。利用が広がる一方で、自治体が豪華な返礼品で寄付を集めようとする風潮は根強い。同省は17年4月の通知で返礼品の価格を寄付額の3割以下に抑えるよう求めたが、返礼割合が3割を超す例も多い。肉や海産物に人気が集まる傾向も変わっていない。ニッセイ基礎研究所の高岡和佳子主任研究員は「返礼品とのセットで制度が浸透したのは事実だが、人気の返礼品を用意できない自治体は不利になった」と指摘。「寄付金の使い道を明確に示すなどの工夫で、寄付文化を根付かせる必要がある」と指摘する。
(深野尚孝、天野豊文)

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