7月12日 新聞を読んで 永田浩三

東京新聞2018年7月8日5面:「働き方」法の危機感直視 昨夜の悔しさ。翌日配達される朝刊はその気持ちを共有できるだけでなく、多角的な視点を提供して冷静にさせてくれ、不貞腐れることなくわたしを職場に送り出してくれる。新聞の効用はそこにあるとずっと思ってきた。6月29日夜、高度プロフェショナル法(高プロ法)が成立した。労働時間・休日・休憩・深夜業務の規制がなくなり、割増賃金は支払われない。なんだか危険がいっぱいの法律だ。どの新聞も怒り心頭だろうと思いながら各紙を見て驚いた。日経は「無駄な残業をなくし、時間ではなく成果を評価する働き方の第一歩」と歓迎。読売も「脱時間給制度」と位置づけていた。東京新聞の1面は、参議院本会議を見守る過労死遺族の写真。記事は、どの政党が反対したのかから始まっていた。安倍首相のこんな発言が引用される。「これからも働く人の目線に立って改革を進めた」。「これからも」とはどういう意味なのだろう。首相は国会で「適用を望む企業や従業員が多いから導入するというものでなく‥」と答弁し、この法律が労働者の要望と関係がないことを認めていた。首相は言葉を変ヘトに使うことで、新しい国語を創造しようとしているのだろうか。東京新聞は「働き方改革法」という言葉を使わない。「『働き方』法」と呼ぶ。これは見識だと思う。1面には、元労働基準監督官のコメントも載った。違法な働かせ方を取り締まるには、時間で縛るしかない。しかし、高プロではそれができない。会社側が設定する業務量の規制もできない。これではずるずると長時間労働が増えていく。
2面の「核心」では、批判はさらに具体的に展開する。政府は高プロの運用には本人の合意が必要であり、対象者は年収が高く会社との交渉力も高いと説明した。だがそれにも疑問がある。年収が高いからといって交渉力も高いとは言えないのではないか。批判は一本調子ではない。佐藤正明さんの四コマ漫画が色を添える。サッカーW杯ポーランド戦での日本の戦法への批判と重ねて、法案がただ通過すればいいということだったのではないかと笑いに包んでやゆしていた。
声を上げた遺族のなかにNHK記者で過労死した佐戸未和さんの母・恵美子さんもいた。法案が成立した夜の国会前にわたしもいて撮影した。目の目で恵美子さんは血の流れるような訴えをした。かつてわたしも同じ職場のプロデューサーだった。とてもひとごとではない。東京新聞の一連の記事は自分たちの日々の仕事に直結するという危機感があふれていた。1日の朝刊27面には、民放キー局での違法残業の実態が載っていた。今後もしぶとい批判を大切にしてほしい。
(武蔵野大学社会部教授) *この批判は最終版を基にしています。

 

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