7月12日 思い出の漫画よみがえれ

日本経済新聞2018年7月7日夕刊1面:ファン集い出資 出版に新ページ 読者が漫画家の「続編」や「完結編」の執筆を支える動きが広がっている。普及が進むクラウドファンディング(CF)を通じて、かつての人気を通じて、かつての人気作品のファンが資金を提供。漫画家にとっても「決め切りや編集方針にとらわれず満足いく作品を描ける」と好評だ。漫画市場が低迷するなか、新たな可能性として注目されている。
「連載当時は中高生で、主人公の世代に憧れていた。いま読むと甘酸っぱい記憶がよみがえる」。東京都渋谷区の会社役員、堀ノ内順三さん(45)は、1980年代後半から始まった人気漫画「NINETEEN19 」の完結編「19 FOREVER」のCFに7万5千円を出資した。「19」は大学生が様々な女性と出会い成長するストーリー。88~90年にかけ連載された。当時はバブル経済まっただ中で、DCブランドのファッションやライフスタイルも華やかに描いた。ファンから続編を望む声がある中で、人材サービス、クリーク・アンド・リバー社がCFで制作資金を募集。88人から目標額の1.4倍の343万円を集め、2017年末に書籍化が実現した。
30年越しの完結 支えるのはかつて読者だった世代だ。「ある程度の金額を出せる年齢になった」(堀ノ内さん)ことが後押しした。作者のきたがわ翔さん(51)は「感謝しかない。ファンだけに向けて描いた」と感慨深げ。「自分も読者も主人公と同じように年齢を重ね、同窓会気分で受け止めてもらえたのでは」と話す。
17年11月にはファンと交流会を開いた。漫画のCFが広がってきたことで、読者の支持さえあれば、作者は描きたいことを描けるようになってきた。「完全燃焼。もう思い残すことはない」。80年代前半に週刊少年マガジン(講談社)で連載し、アニメ化もされた漫画「Theかぼちゃワイン」。作者の三浦みつるさん(63)は昨年12月の「完結編」で引退を宣言した。背中を押したのはファンの出資だった。
絵本作家への転身を考えていた三浦さんに制作を持ちかけたのは、電子書籍事業ビーグリー運営のCFサイト「FUNDIY」。募集をかけると目標額の100万円を即日で達成。最終的に約254万円が集まった。予想以上の結果に50㌻超に増量。「フランスのようにハードカバーで漫画を出版したかった」という三浦さんの長年の夢まで実現した。「連載当時は様々な制約があり、完全には納得できていなかった」と三浦さんは打ち明ける。「今回は自分自身も楽しんで、思い残すことなく描き切ることができた」CF仲介のAMRFIRE(キャンプファイヤー、東京・渋谷)によると、漫画のCFが国内で広がり始めたのは16年ごろ。同社でも1000万円以上の資金を集める人気作品が登場。この2年間で成立したプロジェクトは合計で約5000万円にのぼるという。
数十万円で実現 コンテンツのCFといえば映画が代表的だが、漫画の場合、制作費が比較的安いことも普及を後押しする。例えばアニメ映画「この世界の片隅に」は3374人から約3900万円の支援を集めたが、同作の制作費は総額2億円超。映画はCFだけで完成にこぎ着けるのが難しい。漫画の場合は数十万円から書籍化が実現することもある。京都精華大学マンガ学部の教員を務める漫画家の田中圭一さんは「1話100円でも数千人の読者がいれば商業的に成り立つし、好きな作品なら1万円でも払うファンもいる」と指摘。「漫画市場は伸び悩んでいるが、CFや作品ごとの課金など、読者と作者が直接つながる形には新たな可能性がある」と話す。(嘉悦健太)

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