7日 空き家 ネット上に出会いの場

朝日新聞2017年7月5日25面:当事者間でまずやりとり■再利用法、議論するサイトも 都心回帰や人口減によって年々増えている空き家。インターネット上で売り手と買い手をつなぐ「マッチングサイト」を利用して売買する取引方法ができてきました。サイトの仕組みや、取引にあたっての注意をまとめました。
東京都八王子市の男性(77)は、山梨県にある築20年余りの山荘の行く末に頭を悩ませていた。約1200万円をかけて借地権付きの土地に建て、週末のたびに通っていたが、妻が脳血栓で倒れてからは足が遠のいた。昨夏、売却できないかと大手や地元の不動産店に相談したものの、「借地権付きであることや、築年数を伝えると、電話口でやんわり仲介を断られた」。
昨年9月、あるマッチングサイトに掲載すると、翌週から18件の問い合わせが相次いだ。2ヵ月後、内覧に来た東京都に住む30代の夫婦と170万円で売買契約を交わした。「サイトのおかげで山荘を使ってくれる若い人につながることができた」と話す。このサイトは「家いちば」。空き家や空き地を売りたい人が掲示板に物件情報を投稿し、買いたい人がサイトを通じてメッセージを送る仕組みだ。東京都新宿区の不動産コンサルト藤木哲也さん(47)が2015年10月に立ち上げた。
当事者間で売買の話が進めば、宅地建物取引士の資格を持つ藤木さんらが双方の間に立ち、重要事項説明を行い、契約書を作成する。掲載料は無料だが、成約した場合、売り手と買い手はサイト側に売買価格に応じて1.5~5%の仲介手数料などを払う。これまでに青森県の畑付きの家、広島県のアトリエ付きの家など約60件の空き家、空き地が投稿され、6件の売買が成立した。
投稿された空き家や空き地に対し、さまざまな人がアイデアを持ち寄って利活用の形を探るー。「ハロー!リノベーション」を2月に立ち上げたのは、不動産やまちづくりを手がける「エンジョイワークス」(神奈川県鎌倉市)だ。同社はこれまで、廃工場を「シェアアトリエ」としてリノベーションするなど遊休不動産の再生を手がけてきた。「ハロー」では、空き物件がサイトに登録されると、購入希望者や建築士ら専門家がサイト上で用途や改装方法などについて意見を交わす。エンジョイワークスが助言しながら、契約の仲立ちをしていく。まだ成約に至ったケースはないが、同社は内装業者や出資者などを紹介することも念頭に置いているという。
現在、新潟県の築51年の古民家や、福島県の築70年の元呉服店など22軒の空き家、空き店舗が投稿されている。神奈川県横須賀市の男性(67)は09年、同市内の実家を弟と相続したが、2人とも将来住む予定はなく、空き家になっている。築76年の木造住宅。男性は「放置すれば自分たちの死後、親族に迷惑をかけてしまう」と6月に「ハロー」に掲載。「思ってもいない活用法が出てくるかもしれないと思い、投稿しました」と話す。
 利用する際の注意点 運営者の本業・資格は? マッチングサイトのメリットは? 投稿する側は多数の人に物件情報を提供できる。また、求める側は不動産業者が取り扱っていない物件に出あうことができる。「解決!空き家問題」著者の中川寛子さんは「所有者にとって『お荷物物件』でも、別の人にとっては『お宝物件』ということもある。ネットの強みを生かした動き」と評価する。利用する際には注意すべき点もある。
中川さんは、サイト運営者の本業が不動産業かどうか、また契約前に権利関係を確認し、重要事項説明ができる「宅地建物取引士」などの国家資格を運営者が持っているかを確認するよう勧める。
中川さんは「古い建物になればなるほど、外から見ただけでは傷みの程度は分かりません。気になる箇所は、大工、建築士、住宅診断士などの専門家に意見を求めるのも一つの方法です」と話す。また、水害や震災時の危険性を知るために、物件の立地について、過去の被害状況を自治体の防災担当窓口などで調べることも重要という。(田渕紫織)
増え続ける空き家 2033年に2150万戸の予測 総務省によると、2013年時点で全国の空き家は約820万戸。野村総合研究所は、このまま空き家の解体や活用が進まなければ、33年には国内の住宅の30.2%にあたる2150万戸が空き家になると予測している。従来、住居用の家屋が立つ住宅用の固定資産税は更地の最大6分の1となる軽減措置がある。しかし国は15年、空き家対策特別措置法を施行。倒壊の恐れがある▽衛生上著しく有害ーといった要件にあてはまる空き家を「特定空き家」とし、自治体の改善指導などに従わないと軽減措置から外せるとした。
東洋大学の野澤千絵教授(都市計画)は「相続した人が住めなくても誰かにバトンタッチするマッチングサイトは、空き家対策の一手になる」と話す。一方で、「都心回帰や人口減、新築の供給過剰によって空き家は増え続けており、活用が追いつかないのも現実だ」とも指摘する。

朝日新聞ASAの伸光堂西部販売 森林文化協会

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