6月7日てんでんこ 被災ここにも「19」転機

朝日新聞2018年6月2日3面:「ここでしかとれないもの」。米をワインボトルに詰めて売り出した。 300年先まで集落を存続させる。そんな目標を掲げた長野県栄村の小滝集落は、2年ぶりに実った米とともに動き始めた。2012年11月、東京都板橋区であった「板橋産業まつり」。栄村の復興支援をしてきたライオンズクラブの協力で、小滝のコーナーが設けられた。キノコや山菜などとともに、1㌔500円の米の袋を200袋用意した。いずれも完売だった。
「独自販売できるかもしれない」。小滝の区長を務めた樋口正幸(59)に自信がわいた。村を襲った長野県北部地震から2年を迎えた13年3月、樋口は勤めていた村役場を早期退職した。この集落に夢をかけたい、いま全精力を注がなければと考えた。転機が訪れたのは14年6月だった。東京・銀座の老舗子ども服店「ギンザのサヱグサ」の社長、三枝亮(50)らが、小滝を訪れた。東京から遠すぎず近すぎない場所で、子ども向けの里山体験プログラムに取り組める場所を探していた。東日本大震災の翌日に栄村が地震に襲われていたことを1年前に初めて知った。田んぼ、山、川がコンパクトにそろった小滝集落は理想の場所に思えた。
樋口は、被災した年に休耕して水田を復旧させた経緯や、集落を300年先まで存続させる目標を説明して訴えた。「自慢の米もある。我々の代で終わらせるわけにはいかないのです」三枝は、復興にかける思いに心を打たれた。「確かに小滝の米はうまい。これは人に教えなくちゃいけない」。そして即決した。
1㌧買うから、任せてくれ。ワインボトルに詰めて米を売ってみたい」ワインボトルを選んだのは、住民の米へのこだわりを感じたためだった。雪解け水でつくる小滝のコシヒカリは、ほんのり甘みがあり、冷めても味が落ちにくいという。「ここでしかとれないもの」という意味で、ワインと同じだと考えた。秋に都内を中心に1千本を試験販売し、完売した。本格販売に乗り出した15年、樋口は集落の全戸が出資する合同会社「小滝プラス」を設立し、代表に就いた。1戸1万円の出資金で住民が従業員。集落の力を足し合わせ、他の地域とのつながりもプラスする。そんな意味を会社名にこめた。(鶴信吾)

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