6月5日てんでんこ 被災ここにも「18」存続

朝日新聞2018年6月1日3面:「慌てなくていい。必ず元に戻れる」。300年先を見据えた目標を掲げた。 にぎわいが集落に戻ってきた。震度6強の長野県北部地震から5ヵ月が過ぎた2011年8月16日、長野県栄村の小滝集落で恒例の夏祭りが開かれた。家が壊れて仮設住宅や村外に出ていた人も顔を見せ、残った人の家に泊めてもらった。ちょうちん行列の子どもらが県歌「信濃の国」を歌いながら練り歩くと、集落は一気ににぎやかになった。一度は祭りの中止を口にした区長の樋口正幸(59)は「祭りが人の心をつなぎとめる」と大切さをかみしめた。
次男の光(29)は、練習を重ねてきた獅子舞をやり遂げた。瞭は住民からねぎらいの言葉をかけられ、泣き出した。初めての大役を果たし、集落が活気づくさまに、うれしさで感情があふれた。余韻が残る8月28日、小滝集落の住民はそろってバスに乗り、7年前の新潟県中越地震の被災地へと向かった。栄村と似通う中越の人たちの経験をもう一度聞こうと考えた。「奇跡の集落」と言われる新潟県十日町市の池谷集落を訪れ、樋口は度胆を抜かれた。
限界集落と言われ、中越地震後は集落を捨てるとまで考えた。それが、ボランティアなどの縁で若者が移住して人口が増え、平均年齢もぐんっと若くなったのだという。可能にしたのが、外部との交流を拒まず、歓迎するという考え方だった。「俺の土地とか誰の土地とか、そんなのは気にしない」と池谷集落の人たちは言った。「土地や財産を守ろうなんて考えたら、外の人はやってこない。守らなくてはならないのは、外の人が山村で暮らすための術、知恵、技です」そして口をそろえた。「何とかなる。慌てなくていい。必ず元に戻れる」樋口は救われ、焦りが消えた。栄村を襲った地震から1年が過ぎ、青々と稲が茂る光景が戻ったころ、復興に向けて新たな目標を掲げた。小滝を300年先まで存続させるー。存続が危ぶまれた300年前の歴史をもとにした。江戸時代、水不足に悩んだ祖先は一度は越後に移り住んだ。だが、故郷を捨てきれなかった。ときの庄屋の努力で水を引いて戻り、今日まで続いてきたという。12年秋、小滝は2年ぶりの黄金の穂に包まれた。「せっかく作った米だ。高く売りたい」。住民は販路を探り始めた。(鶴信吾)

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