6月5日 オトナになった女子たちへ 伊藤理佐

朝日新聞2018年6月1日29面:あのカラスは‥ オナジ・カラス。マリア・カラスみたいに言ってみた。言ってみたところでアレなんですが、たぶん、同じカラスだと思う。最近、近所で目撃するカラス。車道のまんなかを、まーっすぐ、長ーーく、ゆ~~~っくり、低空飛行して、気持ちよさそーーに、遊んでいるカラス。たぶんオスやね。(女の勘)「こうね、道スレスレに」と、腕をひろげてヤツのマネしてみるのだが、似ているのかわからないヨシダサンとムスメ。
「同じカラスだと思うんだけど、」続けるわたし。「走ってる車の前にビュ!」「って急降下して、低空飛行するんだよ」 それはなんか、カラスが車を誘導しているみたいで、運転手さんビックリの顔も、モノマネしとく。「見せたいナ~」と、力んでいた。わりにすぐ、その時がやって来た。夕方、ムスメと帰っていたら、むこうからヤツが低空飛行してきた。こっちにくる。「あっ、ほら!」と、はしゃいだ瞬間‥ん? 今日は子分、連れている? ひとまわりもふたまわりも小さい白っぽい鳥が2羽、うしろからついてくる。すごく、ないている。「あ…」カラスは白いものをくわえていた。ひな鳥。子分に見えた2羽は親鳥だ。
ムスメも「あ‥」と、言った。ビュ! と、急上昇して、家の屋根で見えなくなった。親鳥の声だけ聞こえる。人間は、しーん‥となった。ムスメが「もしかして」「公園で桜の枝おとしてくれたのと同じカラスかな?」なんか白いのくわえてたし。と、うつむいた。そうそう、ムスメが小さい頃、桜の木の下で遊んでいたら、ボトッで、桜が枝ごとおちてきた。見上げるとヤツが「カァー」って。優しいカラスもいるんだ~なんて。「いや、ちがうカラスだよ」と、言った。でもすぐに「いや、同じカラスかも」とも言った。本当にオナジ・カラスかもしれないから。(漫画家)

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