6月4日てんでんこ 被災ここにも「17」決断

朝日新聞2018年5月31日3面:「休耕すべきです」。7年前の中越地震でも、水田の被害が相次いでいた。 「絶対に米は作れない。休耕すべきです」。雪解けとともに水田の地震被害が明らかになった長野県栄村の小滝集落。住民の決断を後押ししたのは、2004年の新潟県中越地震の被災地からのこんな助言だった。11年5月15日、小滝公民館に集まった住人を前に、新潟県小千谷市から招かれた地域おこし団体の代表、細金剛(65)は7年前の経験を話した。細金の済む若栃集落は小滝から北に30㌔の山間部にある。稲作の盛んな豪雪地帯で、棚田であることもよく似ていた。
「田の表面だけ直しても、内部に亀裂があって水を張れないトラブルが後から出てきた」。細金が休耕を口にすると、公民館は水を打ったように静かになった。中越地震の発生は10月23日。その後の積雪期を経て、翌春に隠れた被害が明らかになった。経験に裏打ちされた細金の言葉には重みがあった。
小滝集落の住民は当初、応急的な復旧工事で作付けできるだろうと考えていた。本当に地中深くまでひびが入っているのだろうか。集落で水田対策を考える「特命班」の住民3人は、信州大学のチームと被害を調査した。表面にひびがある場所を掘り下げると、多くは深さ50㌢以上に及んでいた。水田の底にあたる耕盤に亀裂が走っている所もあった。「やはり田を根こそぎ直さなくてはならない」。区長だった樋口正幸(59)は、住民と相談を重ねた末、集落のほぼ全体での休耕を決断した。それが復興への近道だと考えた。
それでも樋口は不安だった。いつもなら緑の葉が揺れる夏。水田には水すらなく、土がむき出しのままだった。もう二度と、元のような小滝に戻れないような気がしていた。毎年8月16日には、小滝集落の夏祭りがある。「こんな大変な年にできるわけがない」。樋口は集落の会議で、夏祭りを中止すべきだと住民に提案した。その言葉に若い世代が反発した。「こんなときだからこそやるべきじゃないのか」「やめる理由なんてない」。驚いたが、うれしかった。「お前たちがそういうのなら頼む」。そう伝え、夏祭りを決行することにした。祭りの主役の獅子舞は樋口の次男の光(29)と三男の瞭(26)が務めることになった。瞭にとって初めての獅子舞。7月下旬ごろからは公民館で毎晩3時間、光が舞い方を教え、帰宅後も練習に励んだ。(鶴信吾)

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