6月18日 スルガ・バブル【中】

朝日新聞2018年6月14日9面:行員自ら売り物件探し 「私どもは収益不動産の購入・買い増しサポートをする『専門チーム』です。弊社で一棟収益不動産の購入を希望しているお客様約2千名のフォローを日々しております」2015年6月、大阪市の不動産業者に1通のメールが届いた。発信元はスルガ銀行東京支店の行員。直前に初めて営業電話をかけてきて、関西の売り物件を教えてほしい、と求めてきたという。
スルガ銀行の行員は「ウチには異なる二つの顔がある」と話す。一つは地元・静岡と神奈川の店舗網で預金や住宅ローンを扱う「地方銀行」の顔。もう一つが全国の都市圏で高金利の個人向け融資を手がける「カネ貸し」(行員)の顔だ。なかでも収益の柱を担ってたのが、不動産投資向け融資だ。不動産業者と連携し、老後不安を抱える会社員や節税目的の医師らをターゲットにした。金利は年3~4%程度と、0%台で競う住宅ローンと比べて高く、最近の増収増益決算の推進力にもなった。行員らによると、同行が不動産投資ローンやカードローンの拡大にカジを切ったのは13年ごろ。日本銀行が異次元の金融緩和を始め、金利は一段と低下した。地道な住宅ローンでは稼ぎにくくなっていた。
当初は新築ワンルーム投資が活だった。ただ、競合する金融機関が多く、スルガ銀行の金利は高めで劣勢だった。潮目が変わったのは14年以降、スルガ銀行に近い不動産業者が、続々と中古1棟マンションやシェアハウスなどの高額物件を扱い始めてからだ。物件価格が高額になり、スルガ銀行の融資額は急速に増えた。融資時に客に求める自己資金も多額になり、スルガ銀行は預金通帳などで貯蓄を確認するようになった。そうした中で業者が通帳コピーを改ざんし、預金残高を多く見せかける不正が横行するようになった。
不正がかれば本来は融資は通らない。しかし、苛烈なノルマに追われ、融資実績を上げるのに必死なスルガ銀行の行員は黙認した。早くから中古1棟マンション投資を扱った不動産業者の元幹部は振り返る。「5年前はスルガ銀の審査も他の銀行と同様に厳しかった。日を追うごとに手間が省け、悪条件の物件も簡単に通るようになった」東京・日本橋のたもとにある東京支店は、地方の業者への営業電話に加え、行員をホテルに滞在させて地方の投資物件を探すこともあった。「客は業者がすぐに見つけるが、売り物件のほうは枯渇した」(元行員)からだ。
業者間の物件の奪い合いも激しく、交通の便が悪い地方の物件も驚くほどの高値で売れた。多くは空室率や家賃を偽り、スルガ銀が物件を高く評価したものだ。空き部屋にはカーテンをつけて電気も通し、過剰な融資が引き出された。過熱ぶりに、一部の業者が事業を縮小する動きもあったが、ノルマに追われた行員の営業攻勢は続いた。ある業者は昨秋、東京支店の行員からこんなLINEを受け取った。「上司から案件が少ないと詰められた。なんとか新しい案件をお願いします」
(藤田知也)

朝日新聞ASAの伸光堂西部販売 森林文化協会

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