6月14日てんでんこ 自然エネ100%「3」三つの壁

朝日新聞2018年6月9日3面:温泉熱で電気をつくるバイナリー発電づくり。「掘り出しもの」の人材だった。 5月の緑がまぶしい昼下がり。飯舘電力の前専務、千葉訓道(65)は福島市土湯温泉町から分け入った山中にいた。暖流わきの砂利道を登ったところで、鉄パイプとオレンジ色のタンクが絡み合い、盛んに蒸気を噴き出している。130度の温泉熱で電気をつくる「バイナリー発電」施設だ。この日は市内の企業で研修するコンゴ人の鉱物研究者を案内した。その前には東京から来た生協関係者の視察につきあうなど、千葉は以前の職場に毎月のようにやってくる。
外資系企業で働いていた千葉が土湯に飛び込んだのは、2012年の秋だった。前年の3月11日。単身赴任先の東京から福島市内の妻の実家に戻った時、大きな揺れに直撃された。58歳の誕生日だった。「家族の元へ帰れ、ということか」会社を辞し、「復興に役立てる」転進先を探すうち、土湯の元旅館経営者(69)に出会う。衰退したまちを再生するたまに地熱発電会社を立ち上げようとしていた。2人で「元気アップつちゆ」を設立した。
エネルギーの知識はゼロ。地熱発電と小水力発電の仕組みを学びながら、10億円余りの事業費を集めるため、自治体への補助金申請や銀行・信金との融資交渉、20件もの許認可申請に走り回った。発電所着工にこぎつけたのが14年。「まちづくりは地元の人たちの仕事」と言い残して、土湯を離れた。
その少し前。二つの発電所の視察にやってきた環境エネルギー政策研究所長の飯田哲也(59)は千葉から、土湯を「卒業する」決意を聞く。佐藤弥右衛門(67)にすぐ電話した。「いい掘り出しものがありますよ」福島県喜多市の酒造会社9代目は前年、同市に会津電力を設立したばかり。東日本大震災前から酒米を取引していた飯舘でも、再生のために電力会社立ち上げを考えていた。
市民電力を起動するときに越えなければならない「三つの壁」がある。と千葉は土湯で思い知った。①ファイナンス②合意形成③許認可だ。飯舘電力の三つの壁を前になお、もがきながら、千葉と佐藤は語り合う。「ここが、うまく回り始めたら、われわれよそものは去ればいい。もともと、村の尊厳を取り戻すための事業だから」。それがいつになるか。今はまだ見えない。(菅沼栄一郎)

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