6日「窓辺的小豆豆」1000万部のわけ

朝日新聞2017年7月4日27面:個性尊重の流れ・読書会で評判に 俳優・黒柳徹子さん(83)の自伝的物語「窓際のトットちゃん」が中国で1千万部を突破したのを記念するイベントが6月21日に北京で開かれた。日本での累計発行部数800万部を超える大ヒット。多くの人を引きつけるのは、なぜなのか。
「以前は英雄が登場する本ばかり読んでいて、人は何か大きなことを成し遂げてこそ価値があると思っていた」。児童文学作家や教育関係者ら約300人が集まった会場。本を中国語に翻訳した趙玉皎さんが最初に読んだ時の驚きを語った。日々の生活を楽しみ、学校の先生になる夢を持つ。そんなトットちゃんに違和感を覚えたが、今は違う。
「子どもは努力してくれれば、必ずしも他人に勝たなくていい。人生を豊かに送ってくれればいい。そう思えるようになったのが、この本の価値だと思う」児童文学作家の伍美珍さんは「飾らない言葉で日記のように書かれていて、子どもにも分かりやすい。教育に対する理念も自然な形で盛り込まれている」と幅広い年齢層に愛される人気の秘密をそう分析した。
教育に対する考え方に少しずつ変化が現れていることも後押ししたようだ。中国では大学人試「高考」が一生を左右すると言われ、幼稚園からの塾通いも当たり前。成績重視で、トットちゃんにように好奇心旺盛で先生の言うことを聞かない子は「問題児」扱いされてきた。だが今は、子どもの個性を大事にするようになってきたという。
イベントに参加した3歳の子を持つ安寧さん(31)は、小林校長先生がトットちゃんの話を4時間聞き続けた話が印象に残る。「何でも無理やりやらせるのではなく、辛抱強く子どもたちの個性を尊重していきたい」
教育評論家の孫雲暁さん(62)は「この本は親たちに『これでよいのか』と育て方を考えさせる役割を果たしている」と話す。中国語版の「窓辺的小豆豆」は2003年に発売。今は月10万部ペースで売れ続けているが、当初は日中関係が悪化した時期でもあり、伸び悩んだ。変化が起きたのは、発行元の新経典文化が全国の学校に本を贈り、先生たちと一緒に読書会を始めてからだ。保護者や教え子に紹介し、口コミで評判が広まった。
同社の陳明俊社長(47)は「こんな素晴らしい本が評価されないままでは我慢できなかった。内容を知ってもらえれば、必ず売れると信じていた」。今後の目標は、5千万部という。(北京=延与光貞)
「トットちゃん」は世界35ヵ国以上で読まれている。その魅力について、黒柳さんが答えた。
面白いところがあればすぐ飛んでいくトットちゃんが、子どもらしくて愉快でしょ。そんな中、だんだん戦争に巻き込まれていく、そうした状況も改めて知って欲しいですね。それとトモエ学園みたいな自由な学校への憧れ。中国では詰め込み教育がすごいと聞きました。子どもも疲れちゃっているんじゃないでしょうか。自由な学校というのは小林先生の考え方です。子どもを絶対的に信じていましたから。そういう大人は今いないですからね。
空襲で学園は焼失しました。どんなに子どもたちが夢を持って学校にいようと、先生の志があろうと、焼夷弾何個かで無くなってしまう。戦争というのはそういうもの。やっぱり私は戦争反対だって思っています。
印税は社会福祉法人「トット基金」の活動に使われ、東京都品川区にあるトット文化館を拠点にろう者の劇団で俳優を養成したり、障害者の就労支援をしたりしています。「トットちゃん」で唯一書き忘れたことでもあるんです。学園には障害のある子どもたちもいて、みんなで遠出する時、小林先生は「手を貸してあげなさい」って言わないんです。「みなな一緒にやるんだよ」とそれだけ。その時、子どもたちはどうすれば一番いいのか考えるでしょ。私の中ではボランティアって思ったことがないんです。「もっと優しく」ということをみんなに少しずつ分かってもらえたらありがたいですね。(聞き手・塩原賢)

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