5月9日 こちら特報部

東京新聞2018年5月4日18面:原発の街で生まれ育ち、原発で働き、そして原発ですべてを失った 俳優・中村敦夫さん 朗読劇「線量計が鳴る」上演 (白名正和)
テレビドラマ「木枯らし紋次郎」で知られる俳優で、元参院議員の中村敦夫さん(78)が、東京電力福島第一原発事故をテーマにした朗読劇「線量が鳴る」を制作し、上演している。「ライフワークとして演じ続けたい」と意気込む。「ゼロ」へ言葉響かせる。 劇の主人公は、原発が立地する福島県双葉町で生まれ育った元原発配管技師の男性だ。線量計が発する警告音とともに、男性役の中村さんが「原発の町で生まれ育ち、原発で働き、そして原発ですべてを失った」とつぶやき、2時間の劇が始まる。
中村さんは福島弁で、男性の人生を語る。設備の点検結果をごまかし続ける会社の体質に我慢がならなくなり、不正を内部告発してクビになる。そして2011年3月11日。「取り返しのつかねえ原発事故が起きちまった」劇の後半では、原発が日本に導入された経緯や事故の背景を指摘する。政治家や官僚、御用学者ら原発利権に群がる勢力を「六角マフィア」と批判。「長いものには巻かれろつう諺があっけんど、あれは間違いだべよ。一度まかれたらどんどんまかれ、最後には首に巻かれて絞殺される」と再稼働に向けた動きをけん制する。
中村さんは俳優として活躍する一方、1998年に参院選で初当選し、2004年まで環境問題に力を注いできた。70歳を過ぎゆっくりしようと考えていた時、原発事故が起きた。東京都生まれだが戦時中に福島県いわき市へ疎開し、中学卒業まで過ごした。福島はいわば第二の故郷だ。「人生で東京以外に、こんなに長くいた場所はほかにない。素晴らしい場所を事故で失ったことに怒りがわいた」表現者として原発事故に対して何ができるか悩んだ。「大勢でやるオペラも考えたが、非現実的。演劇の原点でもっとも単純化された朗読劇ならば、上演しやすい」と考えた。
3年かけて自ら台本を書いた。主人公の心情だけでなく、スクリーンで図やグラフを見せながら原発の仕組みなどを説明する。「見てくれを楽しむのではなく、何が問題なのかを客の知性に刻印しなきゃいけない。専門的な知識も、ひと言、客に読んでもらいたい」との思いからだ。16年11月、福島県喜多方市で初めて披露された。以後、これまでに都内や愛知県など全国で計30回、上演してきた。どの回も盛況で、当日客が入れないほどという。「やはり原発への危機意識は高い」と手応えを感じている。中村さんは「政治で原発をなくさないといけない」とも強調する。その政治では、現政権のもとで次々と原発が再稼働される一方、立憲民主党は「全ての原発の運転を速やかに停止し廃止する」とする原発ゼロ基本法案をまとめた。
「原発ゼロと言い切ったことは評価できる。いま原発が再稼働されるのは、法律で認められているから。原発ゼロという思いの人たちが集結し、法律を変えなくてはならない」劇は今後、横浜市や名古屋市で上演する予定だ。主催するのは、各地の市民でつくる実行委員会。「知らない人から声がかかるのはうれしい。今後もできる限り上演し、原発をなくすことを訴えていく」と力を込めた。 上演の問い合わせはクロスポイント=電03(3586)5020=へ。

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