5月8日 発した先に「5」

朝日新聞2018年5月3日27面:17歳の投稿 過剰な賛否 今年3月、名古屋市立八王子中の公開授業で前川喜平・前文部科学事務次官が講演したことについて、文科省が市教育委員会に問い合わせた問題が発覚した。「意味のない講演。森友・加計のはなしばかり」ほどなくネット上で、それより1ヵ月ほど前に、こんなツイートをしていた高校生が注目された。八王子中の公園と同じ頃にあった前川氏の別の講演に対する感想だった。
加計学園問題について「行政がゆがめられた」と発言した前川氏。ネット上で前川氏に批判的な女性と高校生がやりとりし、「講演は政治的な話ばかりで心に響きませんでした」といった言葉が発せられた。ネット上に高校生を称賛するコメントがあふれた。「出たー。純真な生徒の率直な意見」「高校生の前でイデオロギー全開の講演などとんでもない訳で!」参加者や主催者によると、講演は八王子中とは違い、主に教員向け。テーマは教育で、加計問題などに触れたが、政治的な話がメインではなかったという。
「素晴らしい高校生! 国会前で首相を批判するジジババたちに爪の垢を煎じて飲ませてください」そんな投稿をした千葉県内の塗装業の男性(45)は、記者に「高校生の投稿で、やっぱりこんな講演かとふに落ちた」と話す。飲食など20以上の職業を経験した。海外から首相の靖国参拝が批判されることに疑問を抱き、政治に関心を持った。「ネットではマスコミが報じない真実がわかる」。森友・加計問題は「野党の陰謀だ。完全に『打倒安倍』でやっている」と話す。「左」と思う人たちとツイッターで対話を試みたことがあるが、「ネトウヨ」と言われ、やりとりが続かなかった。「ああいう人たちって対話ができない」。男性は言った。
何気ない感想発端 深まる溝 「本当は高校生じゃないでしょ」「適当なこと言うな。ツイートを消せ」。高校生の発言を否定しようとする投稿も相次いだ。東京都内の女性(54)はツイッターで「前川氏批判のために出席したのでは」と高校生を問いただした。記者が会いに行くと、女性は「前川さんは教育の話をしたはず。『モリカケばかり』なんてデマ」と力説した。中学校で理科を教えてきた。福島第一原発事故時、放射能の正しい情報が知らされなかったと考え、「正しい情報」を発信しようと思ったという。テーマは次第にヘイトスピーチの問題などに広がった。
2台のスマホを持ち、次官があればツイッターをチェックし、論戦を挑む。「言っても無駄な人が増えた。相手の矛盾を広く知らせることで、社会的制裁を与えることにした」と言う。女性との激しいやりとりの後、高校生はツイッターを一時非公開にした。
スマホの画面は、自分の投稿への返信やリツイート(転載)を示す通知でいっぱいになり、バッテリーはみるみる減っていったー。喫茶店でクリームソーダを飲みながら、男子高校生(17)は振り返った。講演に行ったのは、面白そうだと思ったからだという。「聴いてきたらつまらなくて、なんとなく書いた感想だった。政権擁護のために言ったわけじゃないのに称賛と批判が広がって、だんだん不安になった」高校生向けの講演と勘違いした人や、八王子中の講演と取り違えていた人もいたが、拡散が速く誤りをいちいち指摘できなかった。
相いれない言葉がネット上を飛び交った半月ほどの間、八王子中には前川氏の授業に関する電話が200件以上あった。当時校長だった上井靖さん(60)によると、大半が匿名の批判だった。「教育に政治を持ち込むなんて」とまくしたてて電話を切る人、ひどい言葉で学校を中傷する人・・。「この人たちの背景に、いったい何があるんだろう」。上井さんは3月に校長を退任した後も考え続けている。 =おわり

朝日新聞ASAの伸光堂西部販売 森林文化協会

ご予約・お問い合わせはお気軽に

Tel0120-740-276

〒352-0011 埼玉県新座市野火止8-14-29

ページトップへ戻る