5月7日 発した先に「4」

朝日新聞2018年5月2日27面:沖縄分断映すメディア 4月23日、沖縄県沖縄市。コミュニティーFMラジオ局「オキラジ」から女性の声が流れた。「中国の侵略と琉球独立が進行中。地元新聞マスコミを含む左翼活動グループが主体です」「沖縄県の反戦平和運動はほとんどが偽物で、革命運動をカムフラージュするものです」月曜午後の生放送「沖縄防衛情報局」では、冒頭からこんな言葉が語られる。
出演するのは「琉球新報、沖縄タイムスを正す県民・国民の会(正す会)」メンバーら。オキラジから週1回1時間の枠を買って放送。番組内では地元紙の記事を読み、批判する。コミュニティーFMの放送範囲は市町村単位。オキラジの運営は社員1人とアルバイト3人だ。内容は音楽情報が多い。情報局は2016年に沖縄県宜野湾市のコミュニティーFM局で始まり、県内の那覇市や浦添市、本部町・伊江村に広がった。オキラジは昨年始まった。社員の石川丈さん(37)は「他局から紹介され、内容はその後に知った」と言う。コミュニティーFMは「政治的に公平であること」「事実をまげないこと」を定めた放送法の順守を求められる。
オキラジによると、昨年秋、批判があると情報局側に指摘し、「放送倫理にのっとった放送をする」との誓約書を受け取った。さらに誤った情報を流さないこと、差別用語を使わないことを文書で全番組に要請した。しかし、石川さんは「強く改善を求めても、直さない理由を説明される。僕も調べるが、差別か差別でないか、正しいのか正しくないのか、わからなくなる」と戸惑う。正す会は取材に応じていない。
「信じたい事実」求める動き 米軍基地をめぐり分断が深まる沖縄。米軍基地の問題を掘り下げてきた地元2紙を「反日」と攻撃する人たちがいる。その中で、メディアを舞台に「事実」をめぐる攻防が起きている。4月に宜野湾市内であった講演会。正す会メンバーが、集まった1550人(主催者発表)を前に沖縄タイムス、琉球新報を「県民の敵、国民の敵」と批判した。会場で、正す会メンバーの活動を1面で紹介した昨年6月の八重山日報・沖縄本島版の新聞が配られた。
八重山日報は元々、石垣島など八重山諸島で発行していた日刊紙。沖縄本島で地元2紙に対抗しようと、昨年4月に本島版を創刊した。正す会の活動も基地反対派の活動も取りあげ、「公正中立」をうたう。仲新城誠編集長(44)は本島版について「地元2紙の反基地的な報道などで危機感が高まった。県外の市民や自民党国会議員らの要望も大きかった」と言う。
「報道機関を名乗る資格はない。日本人の恥だ」。昨年12月、八重山日報は「県内の交通事故で米兵が日本人を救出した」という記事と、この件を報道しないとして地元2紙を批判する記事を載せた。記事は産経新聞からの転載だったが、八重山日報は独自取材で、救出された日本人が米兵に「『感謝している』と話している」という記事も掲載した。しかし、そうした事実はなく。後に謝罪、訂正した。仲新城さんは「感謝」の記事について「社会的地位にある人からの情報だったので、そのまま書いた。2紙を意識したわけではない」と話す。
八重山日報の本島版約4200部のうち3割弱が県外の読者だ。昨年4月に本島版の読者になった京都市の会社員正田重信さん(56)は毎朝、布団の中でスマホで記事を読み、感想を添えてSNSで発信する。「地元紙は基地反対派のことばかり報じている。誤報はあまり気にしない」事故の記事が誤報だと指摘したのは琉球新報だった。琉球新報編集局次長の松永勝利だんは「沖縄について事実に基づかない言論が増えてきた」と言う。地元2紙はここ数年、基地問題の偏見や誤解をただそうと、ファクトチェックに取り組んでいる。「県内経済は基地に大きく依存しているか」といったテーマや、裏付けのない「反対運動で日当が出る」という話を検証した。沖縄国際大の佐藤学教授(政治学)は「基地と共存を望む沖縄こそが実情だと信じたい人たちが、県内外で増えているのではないか」と話す。

 

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