5月3日 米地方紙聞 紙代ピンチ

朝日新聞2018年4月27日9面:政権、カナダ製輸入に高関税 保護主義的な姿勢を強める米トランプ政権が、新聞や出版業界向けにカナダから輸入される紙に高関税をかけはじめた。もともと経営が厳しかった地方紙では、紙の値上がりによるコスト増に耐えきれず、人減らへしや廃刊の危機に追い込まれる例が出ている。
平日で24万部を発行する米南部フロリダ州最大の新聞社、タンパベイ・タイムズは今月、社員を50人減らすと明らかにした。「関税は米国の仕事を守ると思われているが、今回は全米の新聞業界の雇用が犠牲になるだろう」。ポール・タシュ最高経営責任者(CEO)は、米CNNのインタビューで窮状を訴えた。
新聞や本、電話帳などに使われるカナダ産の用紙は今春から、反ダンピングなどで最大計32%の制裁関税が課された。「カナダ政府の不当な補助金を受けている」と米製紙会社が訴えたことを受け、米商務省が暫定的な課税に乗り出した。タンパベイ・タイムズが使う用紙は年1万7千㌧。新聞税で紙のコストは350万㌦(約3億8千万円)上がる。人員削減のほか、平日に毎日発行してきた無料タブロイド紙を週間にして節約するつもりだ。
 廃刊の瀬戸際に もともと米国の新聞は、ネットの普及で急激な部数減と広告減に苦しんできた。北米で新聞用紙の需要は2000年から75%も減少。米国内の製紙工場は閉鎖が相次ぎ、多くはカナダ製の新聞用紙に頼っている。
「紙代は人件費の次に大きく、大半の新聞社はコスト増を吸収できない。小さな地方新聞は紙の印刷を完全にやめたり、廃業したりするだろう」。全米約2千の新聞社が加わる業界団体ニュースメディア連合のデービッド・シャバーンCEOはこう懸念する。新な関税は、経営体力のない小さな新聞社ほど打撃が大きい。米公共ラジオNPRによると、米中西部サウスダコタ州にある先住民居留地の新聞ティトン・タイムズは、廃刊の瀬戸際にある。ネットに接続できない読者が多く、広告収入が足りずにウェブ版を閉じたばかり。発行人のエービス・リトルィーグル氏は「命運が尽きつつあるようだ。今週は紙も出せない。とてもひどい終わり方だ」と嘆いた。
カナダ製の紙への関税を恒久化するかどうかは、関係者の意見を聴いた上で、トランプ政権が夏にも決める。
撤回へ訴え強化 今回の制裁関税を求めたのは、米北西部ワシントン州にあるノース・パシフィク・ペーパー社。従業員は約300人とされ、投資ファンド傘下にある。クレイグ・アネバーグCEOは「カナダ産の安価な紙が事業の存続に欠かせないという(新聞業界の)考えに強く反対する」とNPRに語った。カナダの製紙会社は安い水力発電や国有林で価格を下げていると主張。米国の雇用を守るため同じ競争条件が必要だと訴える。
しかし同調する米製紙会社はほかになく、たった1社の訴えが、約60万の雇用を抱える新聞・印刷業界を窮地に陥れたことになる。各地方紙は「広告主や読者のほか、新聞だけができる深い報道を頼りとする地域社会も傷つける」(オーランド・センチネル紙の社説)と関税の撤回を訴え、政治家への働きかけも強めている。
トランプ政権は発足直後からカナダとの貿易摩擦を強め、カナダ産の木材や航空機にも制裁関税を課そうとした。またトランプ大統領はかねて、報道姿勢を巡って新聞業界と対立してきた。ただ、同氏や周辺が今回の制裁関税にどの程度関わったのかは明らかになっていない。(ニューヨーク=江渕崇)

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