5月24日 オトナになった女子たちへ 伊藤理佐

朝日新聞2018年5月18日25面:「ブンカケ~」オジサマ 「イトーさんは、将来さ、あとがきみたいな文章を書くといいよ」 と、20代の漫画家のわたしに、文章をすすめるオジサマ編集者、3人チームがいた。時々、仕事で集まる、なんか変なチームだった。なんかさ、漫画の単行本のあとがきが漫画よりおもしろいからさ、と、漫画の編集やっているのに、シツレーなことを言うのだった。その3人のオジサマと、つまり4人でお酒を飲むと「文、書け」ぶん、かけ」「ブンカケ~」「スガワラブンタ~」とか、よくわからなくなるだった。ただの酔っ払いだった。で、「ほーら、文の仕事、来た!」と、朝日を読んで、「オレ当たっただろ~」と、オジサマ①は、イバッた。そんで、「オレの読んでいる新聞にイトーさんが書いた!」と、なんか、「らしい」喜び方をしてもらった。ぜんぜん合わなくなっていたけど、本を送ると手紙かハガキがきた。一回、(あれ? 今回、ハガキ来るの遅かったなあ)と、思った。オジサマ①が亡くなった。
病気だった。やっぱり、と思った。だって、ハガキが遅かった。生きているオジサマ②、③とお通夜にいった。帰りに居酒屋で、「イトーさんはさ、あとがきみたいな文章書くとイイヨ」と、オジサマ①の、モノマネをした。「イトーさんはよぅ」って、のばんだよね~のばす、のばす! と、笑った。そしたらオジサマ②が、「なんか腰痛きた。ごめん、帰る」と、帰ってしまった。「あ、ホントに帰った」と、残されたオジサマ③とわたしは、「オレ、キャバクラが嫌いで」「わたしは手品が嫌いです」と、変な告白をし始めた。ほんと、手品に心が動かないのだ。同じく、キャバクラに心がピクともしないそうだ。「実は人生ゲームも嫌いです」とも言ってしまった。けっこう秘密なことだった。ぜんぜん涙が出ない夜だった。なんか、そういうオジサマ①だった。これ読んだら怒る、と思う。
(漫画家)

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