5月22日 人生の贈りもの 樹木希林

朝日新聞2018年5月17日28面:ジュリーに「ウルル」私のまんま ≪1974年開始のドラマ「寺内貫太郎一家」で、31歳の樹木は貫太郎(小林亜星)の母、きんを演じる。実年齢より40歳上の役だった≫ バアさんなら動かなくて楽だろう、と自分で決めたんだけど、全然違ってたわね。毎回、激しいアクションがあった。母屋と離れの間を渡すハネ橋が上がっていることに気づかずに、下へ落っこちるという場面があるんだけど、久世光彦さんが「橋があるつもりで、しばらく空中を泳いでくれ」と言うんです。マンガによくあるでしょ、あれよ。
久世さんの要求はいつもすごいのよ。「上手に転ぼうとするな。痛いくらい本気で転べ」とよく言っていました。気持ちのうえでウソがないかということを常に考えながら演じてくれ、という意味なの。それで、孫役の西城秀樹君なんか骨折しちゃって、次の場面はギブスしてた(笑)。私は髪を脱色し、声色を変えて、形はバアさんっぽくしました。でも、バアさんを演じたつもりはないの。気持ちは31歳の私のまんまなのよ。欲は深いし、ジュリーを見ると「ウルル」っとなる。気持ちにウソがない、っていうのはそういうことです。型で演じていないから面白いのね。
≪きんの部屋には人気絶頂だったジュリーこと沢田研二さんのポスターが貼ってあって、その前で樹木さんが「ジュリイィィ!」と身もだえするのが毎回のお約束だった≫ あれ、台本にないです。久世さんからは「ただやるんじゃなく。こみあげてくるようにやってくれ」と言われました。「分かりました」と。≪ジュリイィィ!」と言う前に、じいっとポスターを見つめる。そこタメこそが面白さの源泉だ≫ そのシーンだけ見ても、実は大して面白くないのよ。前後の物語と密接に結ぶついているから笑える。だから、毎回少しずつ違うのよ。うれしい時と悲しい時で変えているしね。「今日はまだ1回もやっていないから、そろそろやってくか」って感じの、あざなりな「ジュリイィィ!」もあったりしたわね。(聞き手 編集委員・石飛徳樹)

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