5月21日 政治断簡 編集委員 高橋純子

朝日新聞2018年5月14日4面:私たちは、黙らない あっそうなのデベソなの。出典は今もってナゾだが、幼き頃、くだらん屁理屈をこれると母にこういなされた。「はめられて訴えられているんじゃないかとか、ご意見はいっぱいある」あっそうなのデベソなの。「セクハラ罪っていう罪はない」 あっそうなの副総理なの。無知であることは罪ではないが、無知に開き直る無恥は罪、ましてた政治家であれば大罪であると、私は思う。
2008年、首相に就任したかの氏は所信表明演説で、「この言葉よ、届けと念じます」と初々しく前置きし、語った。「日本は、明るくなければなりません。(略)わたしども日本人とは、決して豊かでもないにもかかわらず、実によく笑い、ほほ笑む国民だったことを知っています」
それから10年。この国は、暗い。実によく冷笑し、嘲笑し、無恥な者が威張り散らす陰気で陰険な空気に覆われている。政治家が率先して範を垂れ、せっせと種をまいてきた結果である。セクハラという人権侵害に対し、明確に自分の言葉で謝罪しないばかりか、加害者をかばい、被害を告発した側に非があるかのごとき発言を続ける。そのようなむちゃくちゃを、この国の最高責任者は我関せずと放置している。かくして社会に垂れ流されるメッセージは。
逆らっても無駄だ。お前たちは無力だ。 物理的に暴力を振るわれているわけではない。なのに力ずくで抑え込まれたような、口をふさがれたような、恐怖と屈辱が身の内で膨れる。「1億総括躍」だと「女性が輝く社会」だと。ちゃんちゃらおかしくて、ヘソで茶を沸かしてしまったではないか。ぶぶ茶漬けでもどうどす?
女という性への抑圧は、至るところに転がっている。黄金週間、たまたま立ち寄ったインテリア店で、はたと目に留まったピンク色のスリッパ。甲の部分に刺繍がしてある。「I’m Yours」。私は、あなたのもの‥。カップル仕様なのだろうか、深緑色の方は「You’re mine(あなたは私のもの)」だ。もちろんピンクの方を履く男性もいるだろう。わかっている。それでもピンクに課された「私はあなたのもの」にぎゅううと胸が痛んだのは、1週間前、「私は私のもの」という訴えを聞いたからだ。東京・新宿東口の広場。「私は黙らない」というイベントで、学生や主婦、女性も男性も次々マイクを握った、
レイプされた経験を語った彼女。この問題は男と女の闘いではなく、共に立ち上がらなければと言った彼。それぞれの声は時に怒りに震え、涙にぬれ、それでも、前に向かってまっすぐに放たれる。自らを鼓舞するため。傷つけられた誰かを励ますため。共に笑える社会を築くため。「私はもう黙らない。あなたは何も悪くない。あなたは決してひとりじゃない」私たちは黙らない。声を上げることをあきらめない。この国にはびこる冷笑と嘲笑を打ち破る。いつか、必ず。

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