5月20日 小泉元首相インタビュー

東京新聞2018年5月13日2面:小泉純一郎元首相は本紙のインタビューで、「原発ゼロ」に政策転換できない背景には、多額の投資を無駄にしたくない心理があると指摘するとともに、首相がリーダーシップを発揮すれば実現できると強調した。=1面参照  原発「安全、安い、クリーン」うそ 
■ 莫大 ー東京電力福島第一原発事故が起きた2011年3月11日、どこで何をしていたのか。「自宅で新聞か本を読んでいた。大きい(地震だ)なと思ってテレビをつけた。これは大変だと。原発は安全と言われていたのに疑問に思って勉強した。原発推進論者が言っていた『日本の原発は安全』『コストは一番安い』『クリーンエネルギー』という三つの大義名分が、うそだっと分かった」
ー全然安全ではない。「世界でただ一つ、フィンランドにある核のごみ(高レベル放射性廃棄物)の最終処理場の視察に行った。地震も火山も津波もない、岩盤でできた島にある。それでもフィンランドに4基ある原発のうち、2基分の要量しかない。地震も津波も火山もある日本じゃできないと思った。処分場を見つけられない原発を政府が認めることが不思議で仕方ない」
ー抵コスト、クリーンとも言えないか。「それも大うそ。他の電源より安いというのは、原子炉で核燃料を燃やして電気を供給するところだけのコスト。最終処理場を造るにも莫大な金がかかる。今も福島の人たちは何万人も帰れない。クリーンエネルギーどころじゃない。なぜ推進論者の言うことを信じちゃったのか。だまされたのが悪いんだけど、過ちはやっぱり改めなきゃいけないと、(原発ゼロの)講演を始めた」
 証明 ー顧問を務める「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟(原自連)が発表した原発ゼロ基本法案の骨子は、自然エネルギーに転換した方が経済成長できるとした。「現実にゼロでもやっていけているだから、早く自然エネルギーを活用するために行動を起こした方がいい」
ー原発を所管する経済産業省は、太陽光や風力は不安定で、安定電源の原発は必要と主張している。「11年3月から7年間(原発はあまり稼働してこなかったのに)北海道から九州まで1日も(大きな)停電はない。原発ゼロでやっていけるのを証明しちゃったんだよ。原発を支援したお金を自然エネルギーに向ければ、10年たてば、原発が提供していた程度の電源は供給できる。将来、全電源は自然エネルギーでできると思う」
ー政府の新たなエネルギー基本計画は、引き続き原発を全電源の20~22%を担う重要な基幹電源と位置づける見通しだ。「反省がない。将来も20%分の原発を維持しようなんて。いまだに経産省幹部は、原発(を持つ電力)会社に天下りしているから」
「既に投資」真珠湾攻撃と同じ ■ 感情 ー安倍政権は、原発を積極的に輸出しようとしている。「どうかしている。危険性があって自分の国でだめだから、外国に売り込もうとしている。発想が分らんね」
ー小泉政権が手がけた道路公団民営化、郵政民営化は既得権益への挑戦という側面があった。原発ゼロも、原発利権にある政官財の癒着を壊す思いからか。「(郵政民営化などの)当時、反発はあったが、やればできちゃう。原発ゼロをやろうとしないのは、それだけ(既得権益が)根を張っているからだ」
ー原発政策を転換できないのは、政治のリーダーシップが足りないからか。「それが一番ある。同時に、投資をしているからね。撤退というのは難しい。これから(利益を)得るのに、既存の投資を無駄にしたくないから。真珠湾攻撃に突入したのと似ている。理論の裏付けより、そのときの感情でいっちゃう。日本人の精神構造って、どうしてこうなのかな」 ー政治のリーダーシップで打破できるのか。「真珠湾攻撃も、首相が一人でも軍部の圧力に抵抗すれば止められた。しかしみんな首相がぐらぐらしちゃう。似ているよ原発も」
首相が不要と言えば実現する ■ 雪辱 ー安倍晋三首相にはどう話しているか。「『だまされるなよ』『経産省の言うことは全部うそだ』って言っている」 ー反応は。「苦笑して、反応しない」 ー以前、記者会見で「今の安倍政権は無理だが、数年後に新首相が原発ゼロを打ち出せば原発ゼロは実現する」と指摘した。安倍首相ではやはり無理か。 「ここまで(原発が)必要だ必要だと言ったらやめられない。(本来は)時に首相が言えば、雪崩のような現象で、原発ゼロに向かって国民も産業界も進む」
ー自民党で今できる人がいるとすれば。「河野太郎(外相)だよね。前から(原発ゼロと)言ってる。でも外相になっちゃった。今は『首相が推進しているから』という遠慮がある」 ー野党と連携する考えは。「自民党の首相が決断すれば、野党は黙っていても喜んで協力する」
■ 無駄 ー1兆円以上の国費を投じた高速増殖原型炉もんじゅは廃炉が決まった。「永遠の夢の原子炉と言われたもんじゅが、幻の原子炉になっちゃった。三人どころか、三百人いようが三千人いようが専門家の『もんじゅの知恵』は出てこなかった。まさに無駄使いだった」
ー潜在的な核抑止力を持つために、もんじゅの核燃料に使うプルトニウムを生み出す再処理を続けるべきだという意見がある。「なんで抑止力とうのか分からない。日本が核兵器なんて持てるわけがない。そういうことを言う人の理論が分からない」 ー9月の自民党総裁選はどうなる。「分からない。一寸先は闇だ。誰が出てくるか分からないし、安倍さんがどうなるか分からない」 ー原発問題は争点にならないか。「なりにくいだろうな」
小泉元首相のインタビューは、豊田洋一、池尾伸一、金杉貴雄、安藤美由紀、佐藤あい子、伊藤弘喜、宮尾幹成、松崎浩一が担当しました。

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