5月20日 人生の贈りもの 樹木希林⑤

朝日新聞2018年5月14日29面:私ってケンカっ早いんだな ≪樹木さんが文学座の研究生になったのが1961年。劇団創立25年目だった≫三島由紀夫さんや矢代静一さんら錚々たる講師陣がいました。俳優には杉村春子さんや芥川比呂志さんたちがウワーッといてね。創立25周年のパーティーで「これが芸能界なんだ」と感心しました。当然私なんか目にも留めてもらえない。それなのに生意気だったんです。「芝居って面白くない」と思ってた。先輩の芝居は下手だし、演出家の言うことは納得いかない。よく演劇論になるんだけど、それが意外に他愛ないのよ。「あんた、気に入らないわ」とか割と感情論になってね。
そんな中で「ああ、私って口が悪くて、ケンカっ早いんだな」と気づきました。研究生だった私が杉村さんと同じ芝居に出演したことがあってね、その時、杉村さんにまで意見しているんだからね。ある場面で、舞台上に残った乳母車を誰が片付けるか、という話になりました。私は「杉村さんが押して戻ってくればいいんじゃないですか」と言っちゃったんです。「あなた!10年早いわよ」と叱れました。実際、10年も20年も早かったと思います。こんなだから、テレビで森繁久彌さんと共演した時も、名優の演技に最初から衝撃を受けたわけではありませんでした。
≪森繁さん演じる明治生まれの祖父を中心にしたホームドラマ「七人の孫」。64年1~7月に放送され、続編も作られた。樹木さんは主人公一家のお手伝いさん役だった≫ 私は途中から出演したんです。「お手伝いさんがいないと不便だから、誰か来てよ」って感じで呼ばれてね。請われて出演したわけでも何でもない。若い頃はCMでも何でもやっていましたから。毎日、森繁さんと顔を合わせているとね、あの人の人間を見る目がすごい、というのが分かってきたんです。森繁さんに出合わなかったら今の私はなかったでしょうね。(聞き手 編集委員・石飛徳樹) きき・きりん 1943年生まれ。「時間ですよ」「寺内貫太郎一家」で茶の間の人気者に。

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