5月19日 未来ノート カヌー 羽根田卓也

朝日新聞2018年5月13日13面:秘密基地と冒険 遊びの中で育った行動力 羽根田卓也(30)がカヌーの練習を始めたのは小学3年生の時だった。同じころ、それより大切なものがあった。「秘密基地」だ。放課後、愛知県豊田市の自宅に近い竹林に友達と集まる。ゴミ捨て場はら引っ張ってきた車の座席がソファ代わり。平日のほぼ毎日を過ごした秘密基地での時間は何より優先だった。「土日はオヤジと兄貴に川へ無理やり連れていかれる感じで、ここで遊べないならカヌーなどやってられるか、と思っていた」話しているうちに、したいことを思いつく。「大冒険」と言うのは、5年生のころ決行した猿投山への自転車の遠出だ。豊田市中心部から北部の山のふもとまで直線距離で十数㌔。練習のない休日、道を尋ね、外れたチェーンを直しながら、片道約2時間。「今なら30分か40分の距離。自転車も小さく、体力もないから、すごく遠かった記憶がある。周りにチャリで猿投山に行ったやつはいなかった。一番、僕らは行動範囲が広かった」。自慢げに振り返る。
2016年リオデジャネイロ五輪のスラロームカナディアンシングルで、日本カヌー界初の銅メダルをつかんだ。転機は、高校卒業後に強豪国スロバキアへひとりで移り住んだことだ。日本を飛び出す決断をした気持ちは、秘密基地で遊びに夢中だった小学生時代と似ている気がするという。
「やりたいことをただ探し続ける、不純物のない思い。子供の行動に大義名分なんていらないでしょ。自分で考え、仲間を集め、何かを作り、どこかへ行く。そうした物おじない行動力が培われたのかどうか、分からないですけど」日が暮れる前には帰宅することか、遠出では体力や時間を考え引き返すタイミングを考えるとか、「叱られないように」と思いながら遊びの中で分別も学んだ。「遊びすぎだと怒られた記憶はないですね。すごく幸せな子供時代を過ごせたと思っています」(松本行弘)

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