5月16日 人生の贈りもの 樹木希林④

朝日新聞2018年5月11日27面:文学座へ美男美女の中で合格 私の役者の原点は実は北海道の夕張なんです。父親の琵琶の仲間が夕張で鉄道員をしていてね、父が遊びに行くというので、私もくっついていったの。それが大学受験の直前でした。炭鉱のボタ山に雪が積もっていて、地元の子が板に乗って滑り降りてきた。私もマネして滑ったら、足をボキッと折っちゃった。受験はもちろん、卒業式も出られませでした。同級生が希望に燃えて新しい道に踏み出そうとしている時に、私だけ、家でずっとチンとしていなければならなかった。親から小遣いはもらえんるんだけど、何の目標もないというのはものすごい疎外感でした。毎日通える場所はないかなと探していると、新聞に「新劇の3劇団が研究生募集」という記事が出ていました。芝居と言えば学芸会くらいしか経験はなかったけど、まず文芸座を受けに行きました。美男美女が大勢来ていて、これは落ちるな、と思っていたら、なぜか通ったんです。
≪新劇3劇団とは、文学座と俳優座、民芸を指す。樹木さんは、文学座付属演劇研究所の1期生だ。同期には橋爪功さん、小川真由美さん、寺田農さんらがいた≫私ね、器量に関してどんなこと言われても「あ、さいですか」ってな感じで全然平気なのよ。自分では普通だと思っています。でもそんなに厚かましくないのでね、女優として通用する器量じゃないことは分かっていました。ただ、新劇なら不細工でも大丈夫、という風評もあったの(笑)。
後で大先輩の長岡輝子さんから「あんたの耳がいいから合格したのよ。相手のセリフをよく聞いている」と言われました。その時は意味を理解していなかったけど、今ならよく分かります。口を利かなかった小学生時代、周りをよく見て、よく聞いていたのが生きてきたんだと思います。
でも、役者になりたくて入ったんじゃないから、あの頃は非常に生意気だった。「ずっと芝居を続けるつもりなんかないわよ」という態度を取っていました。杉村春子さんにも盾ついていたんですよ。(聞き手 編集委員・石飛徳樹)

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