5月14日 裁判員10年見えた課題「3」

朝日新聞2019年5月12日27面:長期化「大丈夫」と思っても 負担減と心理の充実 両立模索 2018年4月6日。神戸地裁姫路支部に集まった約40人の裁判員候補者たちに、裁判長が問いかけた。「長くて大変な裁判ですが、最後までがんばってきただけますか」公判が始まる被告は、男性3人が死亡したとされる殺人事件や逮捕監禁致死事件などで起訴された。うち2人は遺体も見つかっておらず、被告は起訴内容を否認した。検察側と弁護側で計110人以上の証人を尋問するため、裁判員裁判として過去最高の207日間にわかって76回の公判が予定されていた。裁判所はあらかじめ501人に呼び出し状を送っていたが、384人がこの日までに辞退。呼び出しに応じた77人のうち、さらに37人が仕事への支障などを理由に、裁判員とならないことが認められた。残った候補者たちは、「覚悟」を確かめるかのような裁判長の問いかけに、「大丈夫です」と答え、抽選で6人の裁判員と6人の補充裁判員が決まった。だが、いざ公判が始まると事情が変わった。4月中に1人、5月に入ってからさらに2人の裁判員が辞任を申し出て解任された。被告に無期懲役の判決を言い渡した11月の判決後、主任弁護士だった後藤貞人弁護士は「計画にあわせて審理されている。もっと柔軟にすれば、短くなった可能性がある」と語った。
平日日数は2倍 審理期間の短縮は、裁判員制度の導入にあたって主要課題だった。公判前整理手続きで争点を絞り込み、集中審理を行うことで実現した。しかし、始まってからは公判が長期化の一途をたどり、判決までに要した平均日数は制度開始時と比べ2倍以上になっている。理由の一つは検察、弁護側の主張が正面からぶつかり、争点が多岐にわたる事件が増えいることとされている。結果的に、裁判員の負担は増している。朝日新聞が748人の裁判員経験者に実施したアンケートでは、26%は「1ヵ月以上」の長期裁判を対象から除外するべきだと答えた。約4カ月間にわたって殺人事件の審理に加わった50代の主婦は、週末も外出する気になれなかった時期があった。「事件関係者が話しかけてくる夢も見た。知らずに参っていたんだと思う」公判前整理手続きも長期化しており、被告の拘留が長引くことや、時間の経過で証人らの記憶が薄れることが懸念されている。浜松市の会社経営者を殺害したとして起訴された被告の場合、13年2月から6年超かかり、今年になってようやく公判日程が決まった。
主張の制限危惧 もっとも、「スピード重視」」に違和感を抱く裁判員もいる。東京地裁で傷害致死事件の裁判員を務めた20代の女性看護師は、被告の暴行と被害者の死亡の因果関係に疑問を抱いたが、あらかじめ争点から除外されていたため、法廷で質問できなかった。「市民参加のためとはいえ、冤罪が防げるのだろうか。審理が長くなっても、証拠を絞りすぎないでほしい」と語る。後藤弁護士も、日程に工夫の可能性は認めるものの、「審理の充実が大事だ」と強調する。「裁判員はお飾りではないのだから、裁判所が負担を強調するはおかしい」刑事法に詳しい川崎英明・関西学院大名誉教授は「長期化による負担はあるが、拙速な制限をすることになりかねない」と指摘する。そんななか、審理を短くする案の一つとして提言するのは、警察や検察の取り調べに弁護士が立ち会うことを認めることだ。そうすれば、供述の任意性や信用性に関して争う事件を減らすこともできるという。審理の迅速さと、充実の「最適解」を求める模索は続く。(畑宗太郎)

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