5月13日 裁判員10年見えた課題「2」

朝日新聞2019年5月11日35面:死刑の判断 良かったのか「対象事件除外を」回答は少数 「本当にこれでよかったのか」「最高裁に任せるしかない」。裁判長が判決理由を朗読する間、裁判員の会社員男性(31)は胸が押しつぶされそうだった。最後に読み上げた主文は、今も耳から離れない。「被告人を死刑に処す」 愛知県蟹江町で一家3人が殺害された強盗殺人事件の審理を2015年、名古屋地裁で担当した。遺族は死刑を求めたが、どうしても引っかかる言葉があった。死亡した男性(当時26)と交際していた女性が「一生、罪を償ってほしい」と証言したことだった。「好きな人を殺され彼女が無期懲役を望むなんて・・。死刑は執行されたら終わり。私も、償い続ける方が重要なように思えた」結論は死刑。「限られた時間の中、納得したというより、納得せざるを得なかった。素人にこんな事件をやらせないでほしい」18年、最高裁で死刑が確定したが、モヤモヤは消えない。自分をにらむ被告の顔が今も夢に出てくる。
「被害者を代弁」 負担を考慮し、「死刑が想定される事件」は裁判員裁判の対象から外すべきだという意見は以前からある。しかし、法務省の検討会は13年、除外を見送った。「重大事件に市民が関与する」という制度の理念が重視された。朝日新聞が748人の裁判員経験者に実施したアンケートでも、「除外すべきだ」という回答は17%にとどまる。「被害者の代弁者のつもりで、被害者は何を聞きたいかを想像して臨んだ」。50代の自営業男性は14年、資産家夫婦が殺害された事件を東京地裁で担った。1ヵ月の長期裁判の末、判決は死刑。「審理をやり切ったので迷いはなかった」と振り返る。アンケートでは、死刑を多数決で決める仕組みについても聞いた。54%は「適切」と答えたが、29%が「不適切」として、3分の2や全員一致への変更を求めた。「わからない」も17%だった。
予想外の判決数 命を奪う思い判決に市民は抑制的になり、死刑判決は減るのではないかー。09年に制度が始まった際、多くの裁判官はこう予測していた。だが、10年は3件、11年は9件に増えた。「裁判官だけの心理ならば死刑にならないのでは」というケースもあった。「被害者の声に影響されすぎている。さすがに死刑は取り返しがつかない。何とかした方がいい」。東京高裁では、月に1度の会議で話題になり始めた。同じころの12年、最高裁の司法研修所が、過去30年で死刑が求刑された346事件を分析した報告を公表した。被害者が1人で計画性がないと死刑が回避される傾向が強いなど、死刑と無期の「境目」が見えた。
研究報告に背中を押された東京高裁は13年、被害者1人で死刑とした2件の裁判員判決を相次いで破棄し、無期懲役に変更した。検察側は「裁判員の結論を尊重すべきだ」として上告したが、最高裁は15年に退けた。「裁判員時代でも、死刑は先例を重視する」という考えが判例となった。裁判員裁判で求刑通りに死刑となった被告はこれまで計37人。20人は死刑が確定し、3人は執行された。一方、5人は二審で無期懲役に変更され、このうち3人は確定している。逆に、検察側が死刑を求刑しながら、裁判員裁判で異なる判決が言い渡された被告は、昨年末時点で17人、控訴審などを経て死刑に覆った例はまだない。(北沢拓也)

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