5月10日 通わぬ言葉「5」

朝日新聞2019年5月8日26面:国会の質疑 接してみようよ 「参院本会議、やっと映像きた!」「質疑面白い」 ツイッター名「踊♥ウタマロ」さんは、国会の議論が好きでたまらない。国会のニュースや質疑に感想も加えて、昼夜つぶやく。1日平均170件、この10年で60万件を超えた。国会に関心ある人たちのツイートが飛び交う輪の中にいる。「聴き応え上位の質疑だった」と紹介し、議員からお礼の返信がくることもある。つぶやきの主は、都内に住む40代の女性だ。1坪ほどの小さな店を切り盛りし、営業時間のほとんどを1人で過ごす。窓口の客が途絶えるとテレビやネットで国会中継に見入る。家庭の事情で高校を中退し、社会に出た。この10年余りは、母と暮らす自宅と職場を行き来する日々だ。「狭い世界にいるから、日々新らしいことが出る国会を見るのが楽しいんです」
取材で会うと、「私、ネトウヨでした」と語った。沖縄や在日コリアンに偏見があり、沖縄県内の大学に米軍ヘリが墜落した2004年の事故について、のちに「どうして学校は移転しないんですか?」とツイート。基地の近くに大学があることが問題だと信じて疑わなかった。住民が基地内で墓参りするドキュメンタリーや沖縄のフォロワーとのやりとりで「街より後に基地ができたんだ」。誤ったツイートや記事を信じ込み、凝り固まっていた自分に気づいた。
議員の自伝や、政治や歴史関連の本も読むようになった。自民党の故・野中広務元幹事長の回願録や議会関連の本がお気に入りだ。特定の政党に肩入れすることはない。ただ、国会に敬意を抱くからこそ、財務省による決裁文書の改ざんや、厚生労働省の統計不正はショックだった。政権が底堅い支持を得るなか、安倍晋三首相の断定調の言葉が世間をにぎわせてきた。森友学園への国有地売却問題では「私や妻が関係していれば首相も国会議員もやめる」。野党議員の質問を「御指摘は当たりません」と一刀両断することもある。ウタマロさんは、そういうときの首相の答弁が嫌いだ。「質問があって、答弁があって、キャッチボールになって議論が深まっていくんだから」似たような答弁をする人が増えているのが少し心配だ。
「朝ごはんは食べなかったんですか?」「ご飯は食べませんでした(パンは食べましたが、それは黙っておきます)」大臣や官僚の言い逃れに近い国会答弁を例えたツイートが、「ご飯論法」として有名になった法政大の上西充子教授(53)=労働政策=も、国会の議論をつぶやく一人だ。「ご飯論法」は流行語大賞のトップ10入りするほど話題を呼んだが、興味ある人以外には広がっていないー。そんなジレンマから昨年6月、質疑を街頭放送する国会パブリックビューイング(PV)を始めた。ネットを通じた寄付で機材をそろえ、人通りが多い駅前になどに大型スクリーンを置いて放送する。注目された質疑を動画二、上西さんが開設を加えていく。新聞やテレビが主に伝えるのは、質疑で明らかになったことや政権が認めたこと。そこが、もどかしい。「答えるべきことをどれだけはぐらかしているか。それを伝えるのも大事」 大阪市の秋社員、石川愛さん(34)は2月に市内の私設図書館で国会PVを開いた。10人ほどが参加し、与野党の議員の質疑の感想を言い合った。準備で質疑を文章に起こしたら、徹夜の作業に。「もうこりごり」と思ったが、来てくれた人の反応がうれしかった。5月1日には女性議員の質疑を紹介するイベントを開いた。「好き嫌いの前に、まず見てほしい。見ないことには、考えられないから」。国の統計や技能実習性。まったく意識してこなかった言葉が気になってきた。

朝日新聞ASAの伸光堂西部販売 森林文化協会

ご予約・お問い合わせはお気軽に

Tel0120-740-276

〒352-0011 埼玉県新座市野火止8-14-29

ページトップへ戻る